研究課題/領域番号 |
16K06697
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
玉田 浩之 大手前大学, メディア・芸術学部, 准教授 (70469112)
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研究分担者 |
水島 あかね 明石工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (90454769)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外国人住宅地 / ジェームス山 / 塩屋 / 異人館 |
研究実績の概要 |
本研究は神戸市塩屋の外国人住宅地の形成・変容の過程について、これまで注目されてこなかった英文献資料を精査し、外国人側から見た住宅地形成を明らかにすることを目的としている。 平成28年度はオーストラリア国立図書館(キャンベラ)において資料調査を行い、国内では入手できない新資料を収集した。収集対象は神戸市塩屋に在住していたハロルド・S・ウィリアムズ氏のコレクションを中心とし、文書、写真、住宅地図を入手した。当初予定していた写真資料を収集、複写するとともに、関連資料の総体を掴むことができた。キャンベラでは資料調査に加えて、オーストラリア国立大学の田村恵子氏と面談し、関連資料の所在に関する有益な情報を得た。 塩屋の外国人住宅地「ジェームス山」は英国人アーネスト・ウィリアム・ジェームス所有の私有地であるため、開発当初より一般の人々は入ることが許されなかったが、当時の写真と住宅地図より住宅地内部の空間構成を把握することができた。また、文献資料より戦時中に日本政府により接収され、その後、連合軍に接収されていたことを示す詳細な記録を発掘することができた。 ハロルド・S・ウィリアムズ文書より、明治末期に須磨・塩屋地区に外国人住宅が複数棟建設され、その当時から塩屋に外国人コミュニティのためのクラブが設立されていたこと、そしてそのコミュニティを引き継ぐ形でジェームスが外国人住宅地を建設する至ったことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神戸市塩屋の外国人住宅地の形成過程を把握する上で、当時居住した外国人に関する情報の実態把握が重要な意味を持つため、ハロルド・S・ウィリアムズ・コレクションを収集する計画を立てていたが、概ね予定通り収集を終えることができた。しかし、その他にも外国人住宅地建設の背景となる外国人コミュニティに関する資料を多く所蔵していることが明らかになったため、さらに調査を重ねる必要性が出てきた。これらについては次年度の研究課題とする。入手した複数の住宅地図より、外国人住宅の建設年代の推定、分布状況の把握に努めた。戦後に塩屋外国人住宅地に出入りしていた方への聞き取り調査の準備を進めた。横浜開港資料館にて神戸の外国人居住者の実態を把握した。
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリア国立図書館での資料調査は、想定よりも関係する資料が多いことが判明したため、オーストラリア国立図書館の資料の収集を継続することとする。それらを現在ジェームス山を所有する塩屋土地株式会社が所蔵する資料と付き合わせることで、当時の建設の実態をより正確に把握できると考えられる。また、外国人住宅地建設過程の裏付け作業として、地籍図と土地台帳の調査による外国人土地所有の変遷の把握にも努める。さらに、地域住民への聞き取り調査も開始し、塩屋・須磨地区に移住した外国人たちのコミュニティの形成過程とそこでの外国人たちの生活実態を明らかにすることで、その特異性を浮き彫りにすることができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実地調査の開始が遅れたため、調査に使用する機器の購入を延期した。 調査に伴う人件費も合わせて次年度にくりこした。
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次年度使用額の使用計画 |
実地調査に使用する機器の購入に充てる。 実地調査後のデータ取りまとめの人件費を次年度に計上する。
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