研究課題/領域番号 |
16K06706
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松下 正史 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (90432799)
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研究分担者 |
阿部 英司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70354222)
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (80403864)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 高圧合成 / 長周期構造 |
研究実績の概要 |
ナノスケールで硬いlayerと柔らかいlayerが交互に積み重なった構造のキンク変形は、材料の機械特性を向上させる。特にキンク変形に伴う高強度化機構を有するシンクロLPSO(long-period stacking order (LPSO) synchronized with chemical concentration)はマグネシウム(Mg)合金の強度を大きく更新するBreak throughをもたらした。本研究では、Mg-Zn-Y内のシンクロ型LPSOの形成過程を明らかにすること、ならびに、シンクロ型LPSOと類似した層状構造を有し、尚且つMgのhcp格子と整合な超格子をMg合金中に発見することの二点を目的としている。 (1)シンクロ型LPSOの形成過程 その場X線回折実験と、第一原理計算の組み合わせにより、形成過程を明らかした。Mgの2H構造が、ZnとYの侵入、さらには熱エネルギーを受けて不安定化し18Rへの相転移が発生する。さらに、積層欠陥にSuzuki効果によってZnとYが析出することで化学変調と構造変調がシンクロすることを明らかにした。本内容は現在論文投稿中である。 (2)シンクロ型LPSOと類似した層状構造物質の探索 マグネシウムのhcp(2H)格子と整合な新しい長周期超格子(long-period superlattice: LPSL)を発見し、Scanning electron-transmission electron microscope (STEM)を用いた観察によってその構造詳細を明らかにした。発見された相は、規則GPゾーンに類似した3 layerからなるMg-Zn-Ybと、Mgからなる1 layerを加えた4 layerを1周期とする新奇なLPSLであることを明らかにした。本研究成果はScripta Materialiaにて発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は(1)シンクロLPSO構造の形成過程の解明、ならびに(2)シンクロ型LPSOと同様なミルフィーユ構造を持つ新奇な相の探索の二点である。それぞれの目標に対し、着実に成果を上げてきている。各目標について進捗状況を以下に記す。 (1)シンクロLPSOの形成過程の解明 X線回折と、電子顕微鏡観察の結果より、Mgの2H格子中にZnとYが侵入することにより、2H格子が膨張、その後、Mgの2Hは不安定化し、18Rへの相転移が起こることを明らかにした。本結果は、2012年に論文発表された第一原理計算の結果と一致する。また、18Rが形成されるとSuzuki効果により、積層欠陥部にZnとYが濃化することを第一原理計算によって説明した。上述の研究によって形成過程のシナリオに新たな知見をもたらすことができたと考えており、すでに論文投稿済みである。以上の点より、順調に進んでいると考えている。 (2)シンクロ型LPSOと類似した層状構造物質の探索 本科研費に支えられた研究によって、Mg-Zn-Yb系で二種類の新奇な超格子を発見し、Scripta Materialia誌上で2報報告している。Mg layerとMgZnYb layerが交互に並ぶ層状超格子である。現在は本物質群の拡大を最終目的に形成のクライテリアの明確化に取り組んでいる。本研究についても計画通り順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更や研究遂行上問題となる課題は上がってきていない。これまでに本研究で得た知見をベースに本学術分野をより高めていくことを目標に研究を展開する。 (1)シンクロLPSO構造の形成過程の解明については、実験的、理論的研究によって得られたシナリオをどれだけ多くの人に認めてもらえるかにかかっている。本年度7月にはフランスで開催されるThermec2018で招待講演の機会があり、その場で上記シナリオの正当性について訴えていく予定である。 (2)シンクロ型LPSOと類似した層状構造物質の探索では、これまでに見つけた2種類から得られた知見をベースにさらに物質群を拡大していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1. 次年度使用額が生じた理由 LCCの利用等により、学会発表旅費が軽減されたためである。 2. 使用計画 高圧合成に必要な消耗品費用として次年度に利用する。
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