研究課題/領域番号 |
16K06715
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山口 渡 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 磁性粉末冶金研究センター, 主任研究員 (30292775)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 焼結磁石 / 粒界 / 被膜 / サマリウム鉄窒素 |
研究実績の概要 |
焼結磁石の高性能化には粒界への非磁性相の形成が有効と考えられるが、非磁性相の含有量に応じて残留磁化が下がることは避けられない。非磁性相の量を最小限に抑えながら最大の効果を得るためには、あらかじめ原料粉末表面に非磁性材料の均一なナノ被膜を形成し、それを焼結する方法が有効と考えられる。 本研究では、乾式薄膜プロセスの応用によりSm-Fe-N磁石粉末表面へ非磁性金属のナノ被膜形成を試みた。ナノ被膜の膜厚や均一性、表面化学状態について、走査電子顕微鏡(SEM)やX線光電子分光法(XPS)により分析した。さらに磁石粉末の凝集体内部への成膜の可否について検討するため、成膜後の凝集体断面のエネルギー分散型蛍光X線分析(EDS)を行った。 EDS線分析により得られたFe、Sm、Znの濃度プロファイルによると、粒子内部から表面を横切るところで、FeとSmの強度は単調に減少してゼロになるが、Znの強度は鋭いピークを示す。SEM像中の至るところで同様のプロファイルが得られることから、Znが連続した被膜を形成していることが確認できた。以上は孤立した1個の粒子に対する結果であるが、磁石粒子の多くは凝集体を形成している。凝集体内部の粒子にもZnが被覆されているかどうかを調べるため、凝集体を丸ごとFIBにより切断し、断面のEDSマッピング分析を行った。その結果、内部の粒子もひとつひとつがZnに覆われていることが確認された。これは、凝集体の構成粒子が攪拌中絶えず入れ替わっているためと推察される。 XPSによる表面分析結果からは、Znを成膜した粉末の最表面は、基本的にZnによって占められ、SmやFeはほとんど検出されないことがわかった。この結果も、粒子表面がZn被膜によってほぼ隙間なく覆われていることを示唆しており、SEM-EDXの結果と一致する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の計画は、既有の設備を改造して本研究に必要な装置を準備する部分と、その装置を用いて材料を作製し所期の性能を達成する部分からなる。計画に従って研究を実施した結果、前者の装置の改造については目標を達成したが、作製した材料の性能は当初予測していた水準に満たなかった。その原因を究明するために想定外の時間を費やしたため、現時点の進捗状況は当初計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
作製した試料の性能が当初予測した水準に達しなかったので、その評価データの分析を進め、予測の前提となっていた性能向上メカニズムに関する仮説の修正等を検討する。その結果をもとに、プロセスや材料種を見直し、より確度の高い材料設計の指針を得ることを目指す。また、それをもとにして、所期の目標の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入にあたり、想定していた金額よりも実際の契約金額が安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
原材料の購入費用にあてる。
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