研究課題
低次元量子スピン系の物質では、局在スピンが大きな熱を運ぶことが分かってきており、絶縁性の高熱伝導材料への応用が期待されている。本研究は、2次元スピン系の遷移金属酸塩化物や酸化物に注目し、その大型単結晶を育成して熱伝導を測定することによって、(目的Ⅰ)高スピン熱伝導「室温で50W/Km」を有する物質を創製すること、(目的Ⅱ)高スピン熱伝導の機構「スピン量子数Sとスピン熱伝導の大きさの関係」を解明することを目的としている。今年度は、LaSrFeO4に対して研究を行った。LaSrFeO4はFeO2面を持ち、FeイオンのS=5/2スピンからなる2次元スピン正方格子が形成されている。LaSrFeO4の単結晶を浮遊帯域法で育成し、得られた単結晶の熱伝導率を測定した。その結果、FeO2面に垂直方向は、20K付近にフォノンによる熱伝導の寄与であるブロードなピークのみが観測され、FeO2面に平行方向では、110 Kに大きなピークが観測された。そして、不純物置換効果や磁場効果の結果から、この110Kのピークがスピンによる熱伝導の寄与であることがわかった。世界で初めて、S=5/2の2次元スピン系で大きなスピンによる熱伝導の観測に成功した。LaSrFeO4では、スピンによる熱伝導は、110Kの低温でピークを示した。これは、S=1/2の2次元スピン系La2CuO4の300Kと比べて低温である。この理由は、LaSrFeO4の再隣接スピン間の交換相互作用Jが小さいためと考えられる。しかし、スピンによる熱伝導の大きさは12W/Kmであり、S=1/2の2次元スピン系で観測されている値と同程度であった。これは、2次元スピン系におけるスピンによる熱伝導の大きさは、Sに依存しない可能性がある。このようなスピンによる熱伝導機構を明らかにするためには、異なるSの値を持つ物質による熱伝導率の測定が必要である。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 969 ページ: 012076~012076
10.1088/1742-6596/969/1/012076
巻: 969 ページ: 012077~012077
10.1088/1742-6596/969/1/012077
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 87 ページ: 054704~054704
10.7566/JPSJ.87.054704
Journal of Applied Physics
巻: 123 ページ: 123903~123903
10.1063/1.5021022
巻: 87 ページ: 063702~063702
10.7566/JPSJ.87.063702
巻: 87 ページ: 074702~074702
10.7566/JPSJ.87.074702
巻: 1054 ページ: 012008~012008
10.1088/1742-6596/1054/1/012008
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10.1088/1742-6596/1054/1/012007
Physical Review Letters
巻: 121 ページ: 057002~057002
10.1103/PhysRevLett.121.057002
巻: 87 ページ: 094717~094717
10.7566/JPSJ.87.094717
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10.7566/JPSJ.87.113702