今後の研究の推進方策 |
Y4(SiS4)3 などの硫化物母体で得られた知見を用いて、その他の有望なものも開拓する。Y2O2S, La2O2S, Gd2O2S, CaZnOS などの作製を試みる。通常よりも反応性の高い、硫黄蒸気下での固相反応法を用いる。酸化物の安定性と、硫化物における母体から蛍光イオンへの高効率のエネルギー伝達との特徴をあわせもつ期待がある。あるいはY2O3 にごく微量Sを導入することも試みる。他にも、通常の酸化物母体に蛍光イオンを導入するために、同様の方法、すなわち硫黄蒸気下での固相反応法を試みる。SrTiO3, BaTiO3, SrAl2O4 などを調べる。硫黄が付加的な不純物準位となり、硫化物母体などの場合と同様の高いエネルギー伝達が生じる可能性がある。また、新規なトラップ準位の形成により、長残光などの新機能が発現される期待もある。 様々な蛍光体材料において、同定が困難な欠陥準位が導入され、発光特性に影響を与えることがしばしばある。粉末X線回折の回折線幅を測定し、電子顕微鏡により蛍光体粒径や表面状態を調べるのはもちろんのこと、熱蛍光特性も評価する。低温において欠陥準位にトラップされていた電子が、温度上昇とともに開放されて発する蛍光を測定する。これにより、試料の導入されている欠陥準位を評価する。蛍光の強さや生じる温度により、欠陥の量やエネルギー深さを同定できる。得られた知見を用いて、新規蛍光体材料の開拓および、母体の光吸収波長を利用した高効率蛍光の機構解明をすすめていく。
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