研究実績の概要 |
広い波長領域で発光する蛍光体(La,Y)6Si4S17:Ce3+ を新しくえた。光材料を用いて演色性を向上させるためには、複数種類の発光イオンを用いたり、複数サイトに位置する蛍光体母体を用いたりする必要がある。(La,Y)6Si4S17では Ce3+ は3種類のLaのサイトに位置し、430から700nm の範囲に発光を示す。母体結晶は三斜晶系(P-1)という低い対称性であり、発光波長領域を広げるのに寄与している。 固相反応法により、Laに対するCeの量が0から0.2までのものを作製した。Yを0.1加えることにより、粉末X線回折にて不純物相を示さない試料をえた。78Kでの詳細な選択波長励起発光スペクトルおよびその時間減衰を測定することにより、3種のCe3+発光を明瞭に分離することができた。典型的な減衰時間は30ns であった。ガウス関数によるCe3+の発光バンドを用いて、広い波長領域の発光スペクトルを再現した。吸収波長はCeの位置するサイトにより300nmから500nmの範囲に広く分布していた。 (La,Y)6Si4S17の結晶構造によると、Ce(La)とSとの配位数には、7, 8, 9 の3通りあり、(La,Y)6Si4S17:Ce3+ においても、Ce3+の発光波長と配位数等とを結びつける経験則によくしたがっていることが明らかになった。また、これまでに報告していたGd4(SiS4)3:Ce3+ やY4(SiS4)3:Ce3+ でも同じ経験則が成り立つことがわかり、酸化物やハロゲン化物だけでなくシリコン硫化物まで含んだ包括的なCe3+発光波長の経験則であると理解することができる。有用な蛍光波長をえるための指針を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに研究をすすめてきたY4(SiS4)3 などに加えて、新たな酸化物や硫化物の蛍光体について研究をすすめている。性能の高い蛍光体に用いられるCe3+ を含んだ材料の発光波長と発光効率を制御して向上させることを試みている。 青から近紫外の蛍光体SrSl2O4:Ce3+,Ga3+ では、2通りの方法でGa3+ の添加を試みた。Sr, Al, Ce, Ga を含んだ原料を同時に混合して作製する方法とは異なり、母体SrAl2O4 を作製した後にGa3+ を加える方法では、発光が20倍増強された。粉末X線回折とラマン散乱測定を行うと、格子定数を保ったまま O-Al-O の変角振動の周波数が高波数にシフトしたことがわかった。Ga添加により導入されたひずみが発光増強をもたらしている可能性がある。 硫化物については、SrY2S4:Ce3+ が新しい赤色蛍光体であることを見いだした。600nm に発光ピークをもつ。Ce3+ から赤色発光が生じる例は極めて限られている。Gd3+ を添加することにより量子効率が1.9倍に増大した。20K での詳細な励起波長依存発光スペクトルを測定することにより、SrY2S4 の3種のSrサイトにあるCe3+ が強度比を変化させながら赤色発光を生じていることがわかった。
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