研究課題
省消費電力の照明や表示をえるために、新規蛍光材料の開拓が望まれている。とくに長波長の橙赤色を示す高効率かつ安定な材料が必要である。本研究では、希土類元素を反応性の高い硫化物材料に導入した新しい蛍光体材料を開発した。La2S3:Ce3+ では赤色、Y4(SiS4)3:Ce3+ では橙色の発光を得ることに成功した。光励起の場合の効率は最高で62%に達する。La2S3 のLaのかわりにCe3+ を20%まで導入していった場合には、発光のピーク波長が620nm から650nmまで連続的に変化することがわかった。粉末X線回折を測定すると回折線が最大0.3度シフトしており、Ce3+ の方がイオン半径が2.5%小さいことにより、正方晶の格子定数が0.8%小さくなることが原因である。Ce3+ が隣の硫黄原子から受ける結晶場が増大し、上準位の5d1 の分裂幅が大きくなり、下準位の4f1 とのエネルギー差が小さくなると理解できる。硫化物の粉末蛍光体試料は、これまでは酸化をふせぐために真空中で作製せねばならず、発光強度の再現性などの点で問題があった。二重るつぼ法などいくつかの作製法を詳細に試みることにより、1気圧の硫黄蒸気下で赤色発光する良質の硫化物蛍光体を作製できた。可視光ではなくて電子線で励起した際には、母体を強励起することになる。電子線励起においても、母体から赤色発光するCe3+ にエネルギーが移動して発光が生じた。Y4(SiS4)3:Ce3+ も1気圧硫黄蒸気下で作製することができ、電子線励起による橙色発光をえた。振動子強度が大きく吸収波長域の大きなCe3+ を用いて、橙色や赤色という長波長の発光をえた報告は極めて限られている。発光強度の、電子の加速電圧依存を測定すると、作製雰囲気によりべきの依存性が異なった。母体への励起電子線深さが変化することが原因であると考えられる。
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信学技報 IEICE Technical Report
巻: EID2018-12 (2019-01) ページ: 89-92