研究課題/領域番号 |
16K06722
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
亀島 欣一 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (50251616)
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研究分担者 |
三宅 通博 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特命教授 (30143960)
西本 俊介 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90435826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジオポリマー / 天然ゼオライト / 固化反応 / 気孔率 / マクロ多孔体 |
研究実績の概要 |
本研究では,天然ゼオライトを原料に利用したジオポリマーの作製とその性能向上を目的としている.平成28年度は,天然ゼオライト,アルカリ水酸化物,およびアルミン酸アルカリ塩を原料に利用した,ジオポリマーの形成条件を検討した.まず,天然ゼオライトを熱処理して非晶質化した.この非晶質体とアルカリ水酸化物を所定量溶かしたイオン交換水を,自転・公転ミキサーを用いて混合・脱泡した.得られたスラリーを所定温度でエージングすることで脱水縮重合反応が進行し,ジオポリマー化した固化体が得られた.さらに,アルミン酸アルカリ塩を所定量加えたスラリーを調製し,ジオポリマー化に及ぼすSi/Al比の影響を調査した. ジオポリマー化の進行に伴う試料の収縮により,エージングと共に固化体が容器内壁から自然脱離した.この自然脱離した試料は,水中でも試料形状が保持された.一方,自然脱離しなかった試料は,水中に入れると固化体が崩壊した.従って,自然脱離の有無をジオポリマー化の1つの指標とできることが示唆された.この段階で得られた自然脱離した試料は,直径約35 mm,厚さ約1.5 mmのジオポリマー硬化体であった.これらの試料の開気孔率と曲げ強度は試料に依らず同程度の値で,それぞれ20%と17 MPaあった.また,これらの値は既報の焼成カオリナイトから作製されたジオポリマーと同程度の値であった.従って,天然のゼオライトを原料に用いてジオポリマーを作製できることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,天然ゼオライトを原料としたジオポリマー多孔体の最適な合成条件の探索と,過剰な気孔を含まないジオポリマー多孔体の合成条件の探索を目的とした.前項については,天然のゼオライトを原料に用いてジオポリマーを作製できることを見出しており,目的を完全に達成していると判断された.第二項については,ジオポリマーの開気孔率を10%程度の制御することが望ましいと当初は考えていたが,得られた最も緻密なジオポリマーの開気孔率は20%程度であった.しかし,種々のジオポリマーについて既往の研究を調査したところ,開気孔率は20%程度がほとんどであった.従って,第二項についてもほぼ当初の目的を達成したと判断された.以上より,(2)概ね順調に進展していると結論づけた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の目標通りに,平成29年度はジオポリマー多孔体の多孔性の制御に取り組む.有機系の造孔剤を利用して,気孔率が20~70%となるようなスラリーを調製し,所定温度でエージングすることでジオポリマー化した固化体を得る.次に,得られた固化体を熱処理することで,造孔剤を焼き飛ばし,目的の多孔性をもつジオポリマー多孔体とする.多孔化に伴う表面化学状態,細孔構造,および微構造の変化を探索すると共に,多孔性の付与によるガス透過性能や分離性能を詳細に検討することを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の申請額に比べて交付決定額が減額されたため,購入計画していた自転・公転ミキサーを真空引き機能がないものにグレードを下げて購入した.また,手続き等の関係で外部委託の分析を平成28年度は行わなかった.以上のような理由で,次年度利用額が生じてしまった.
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次年度使用額の使用計画 |
自転・公転ミキサーを減圧下で行うために,真空機器とチャンバーを購入して,当初の目的である減圧下での撹拌ができる装置にグレードアップすることを計画している.また,平成29年度は当初の予定通りに外部委託の分析を実施する計画である.
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