研究課題/領域番号 |
16K06727
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鯉沼 陸央 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70284742)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化グラフェン / 燃料電池 / スーパーキャパシタ / 固体電解質 |
研究実績の概要 |
表面に様々な酸素官能基を有した酸化グラフェン(GO)は、これまでの研究おいて、非常に高いプロトン伝導性をもっていることが分かった。これは、酸化グラフェンによって非常に多く再生されるエポキシ基が重要な役割を果たすことがX線光電子分光法やインピーダンス測定などの評価法によって判明した。 一方、酸化グラフェン表面に鉄フタロシアニンを吸着させた材料は、酸素還元の過電圧が著しく低下することもわかった。これは、鉄フタロシアニン分子の中心金属である鉄イオンが酸素還元の有効なサイトとして作用するためである。これらの知見により、酸化グラフェンは、燃料電池の固体電解して鵜として、これまで利用されてきたナフィオンよりも優れていると期待できる。 そこで、酸化グラフェンを固体電解質としてだけでなく、電極としても利用することにより、セパレーターを必要としないオールカーボン電池またはオールカーボンスーパーキャパシタの開発を行っている。表面を電気化学的に還元することにより酸化グラフェンは電極として十分な伝導性を有し、また電気化学還元では表面だけが還元されることにより、内部は固体電解質として有効に働く酸化グラフェンの状態のままになることが分かった。また、硫酸イオンを添加するとプロトン伝導の効率が著しく向上することも分かった。しかしながら、デバイスの寿命の点に改良の余地があり、最終年度では、酸化グラフェン表面にスルホ器などを導入することにより、更なる特性向上を目指して研究を遂行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
デバイスを繰り返いし動作させた際の酸化グラフェンの固体電解の性能劣化の原因を解明することがなかなかできなかったため、デバイスの特性評価を十分に行うことができなかった。しかし、デバイスの性能劣化の原因が、固体電解質内の硫酸イオンの移動と電極表面の状態変化であることが判明し、その対応策の目途もついたので、最終年度は十分な特性評価を行うことができ、研究の遅れを取り戻すことができると考えている。 デバイスの構築方法とその評価方法は、昨年度中に確立することができ、また、酸化グラフェンの組成や構造の評価方法には、以前から十分な知見を有しているため、研究を完遂することは可能であると考えている
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今後の研究の推進方策 |
酸化グラフェンを固体電解質として利用したデバイスは、電池としての高エネルギー密度だけでなく、スーパーデバイスとしての高出力密度の両方を兼ね備えた性質をもつことが分かったので、電気化学二重層キャパシタとしての特性を発揮できるデバイスとしての開発を目指す。 繰り返し動作させることによる酸化グラフェンの固体電解質としての性能劣化として、2つの原因を突き止めたので、その対応策を最終年度では実施する。一つ目は、酸化グラフェンの層間内にプロトン伝導の向上を目的とした添加剤として導入する硫酸イオンの電極表面への移動を防ぐために、酸化グラフェンに硫酸イオンと同等のプロトン保持力をもつスルホ基を官能基として導入することを考えている。すでに導入できたことはXPSやIRなどの機器分析で評価できているので、今後はデバイス化して性能評価を行う予定である。2つ目の劣化の原因は、酸化グラフェン電極表面の化学組成の変化であることが判明しているので、酸化グラフェンの化学組成が変化しないような動作電圧幅を見出すことで解決できるものと考えている。 上記2点の問題点を解決できれば、これまでにない軽量でウェアラブルな高出力高エネルギー密度を併せ持つキャパシタおよび電池が開発できるものと期待できる
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次年度使用額が生じた理由 |
酸化グラフェンの固体電解質としての特性評価において重要なデバイスの劣化の原因究明に手間取ったため、消耗品の支出金額が予定よりも少なくなってしまった。しかしながら、劣化の原因とその対応策の目途がついたので、最終年度は、電池やキャパシタとしてのデバイス作製を精力的に実施するために必要な物品を購入する予定である。
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