研究課題/領域番号 |
16K06730
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
吉田 智 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (20275168)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガラス / 変形 / 破壊 / インデンテーション |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成28年度は,ほぼ計画通りに研究を進めることが出来た。 顕微ラマン分光測定用の押し込み「その場」観察装置(顕微インデンター)を作製し,押し込み試験中のガラス構造を初めて測定することが出来た。圧子には,ダイヤモンド製ビッカース圧子を用い,圧子を駆動するピエゾアクチュエータおよび荷重計測用ロードセルにより,既設の顕微ラマン分光測定装置に設置可能な顕微インデンターを構築した。 この顕微インデンターと顕微ラマン分光測定装置を用いて,押し込み試験中のガラス構造を評価した。試料には,ソーダ石灰ガラスおよび石英ガラスを用いた。さらに,押し込み試験中に,複数箇所においてラマンスペクトルを測定し,接触圧力の影響も併せて評価した。 これらの結果,ソーダ石灰ガラス,石英ガラス共に,圧子押し込み中に静水圧下の構造変化と類似の構造変化が認められた。しかし,石英ガラスについては圧子下の方が静水圧下に比べて変角モードに帰属されるラマンピークの半値幅が大きくなり,圧子下では原子間結合角の分布が大きくなることが示唆された。また,いずれのガラスにおいても圧子頂点下に近づくほど構造変化の度合いが大きくなり,これはラマンスペクトル測定点の圧力の違いによると考えられた。 一方,ラマンマッピングを取得するために十分な空間分解能を得ることは出来ず,当初目的とした破壊直前のガラス構造の検出のためには,装置の改良が必要であることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り,ガラスの押し込み「その場」ラマン測定を可能とする試作機を作製し,押し込み誘起構造変化のガラス組成依存性が評価できたという点で,本研究は順調に進んでいると考えられる。一方,試作機の問題点も明らかとなっており,次年度以降に測定装置の改良と破壊前のガラス構造の検出に注力する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初の目標である「破壊直前の構造のガラス組成依存性,および圧子形状依存性に係るデータの取得」を達成するために,1.押し込み装置の改良,2.圧子下の構造変化のガラス組成依存性,3.構造変化の圧子形状依存性 の順で研究に取り組む。押し込み装置の改良については,既設のラマン分光装置の3軸駆動ステージを利用できるよう超小型化に取り組むと同時に,空間分解能を上げるために光学系の改良を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試作機作製の際に,これまでの類似装置(顕微インデンター)に付属するパーツを流用することが出来たために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試作機の問題点を克服するために,装置の抜本的な改良を行う必要がある。その改良機作成のために繰り越し分を使用する。
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