研究課題/領域番号 |
16K06732
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
遠山 岳史 日本大学, 理工学部, 教授 (40318366)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シリカマイクロカプセル / 噴霧乾燥 / 粒子強度 |
研究実績の概要 |
本研究は噴霧乾燥法による軽量フィラーまたは徐放性フィラーとして使用可能なシリカマイクロカプセルの作製を目的としている.噴霧溶液には近年開発された金属陽イオンを含まない高濃度ケイ酸(H4SiO4)水溶液を用いる.本溶液は水ガラス水溶液を陽イオン交換膜で分離し,電気分解を行うことで,SiO44-イオンのみを陽極に,Na+イオンを陰極に移動させることで両者を分離した溶液であり,SiO2濃度約20000 ppmと高濃度であるのが特徴である.この溶液は通常は安定に存在するが,加熱により容易にシリカが析出する.そこで,本研究は本溶液(ケイ酸水溶液)を噴霧乾燥することによる中空シリカ粒子の作製と,その性質について明らかにするものである. 本年度は中空粒子ができる噴霧乾燥条件(噴霧圧力,乾燥温度,送液流量,溶液濃度など)の検討を行った.その結果,噴霧乾燥により1~3μmの球状粒子あるいは中心部分が抜けたドーナッツ状のシリカ粒子が得られた.ドーナッツ状シリカ粒子は乾燥温度が高いほど顕著に見られ,乾燥温度の低下に伴い穴は小さくなり,乾燥温度95℃では真球状の球状粒子を得ることができた.これは粘性の高い溶液を用いたため短時間の乾燥では突沸が起きて粒子に穴が空いたことが原因と考えられる.また,粒子を切断して内部構造を確認したところ,内部に空洞が確認でき,中空構造を有していることが確認された.また,顕微鏡下で球状中空粒子を選択し圧縮強さ試験を行ったところ,95℃で作製した中空粒子は圧縮強さ約15 MPaを示したが,乾燥温度の上昇に伴い圧縮強さは低下する傾向が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は高濃度ケイ酸水溶液を噴霧乾燥法することによる球状中空粒子の作製を目指しており,本年度は噴霧乾燥法により粒径1~2μm程度のシリカマイクロカプセルの作製条件を明らかにできた.このため,本研究は当初の計画通りに進んでいるといえる. さらに,一部の試料においては平成29年度実施予定の機械的強度の評価も行っており,十分な成果が得られているものと考えている.しかしながら,収率は当初の予定よりも低く,今後,物性評価をしながら再度最適条件の絞込みをする必要がある. 以上の結果から,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の計画通り目的生成物であるシリカマイクロカプセルを作製することができた.しかしながら,生成物の収率は当初の予定よりも低く,今後は装置の改良(ノズルヘッド,試料回収部)を行い収率の向上を図る.さらには生成粒子中には目的物であるシリカマイクロカプセルのほか,一部ドーナッツ状粒子,穴あき球状中空粒子なども現状では混在しているため,単一粒子を得られる条件をさらに絞り込む必要がある.もし困難である場合には浮沈法などを使い,目的粒子のみを単離することも計画している.試料量が十分に作製できるようになった段階で,かさ密度測定,塗布性・流動性の評価を行う予定である. 一方,最適合成条件の検討と平行して得られたマイクロカプセルの機械的強度の評価,内部構造の確認(壁厚測定),シリカの結晶構造解析を行い,粒子の機械的強度に及ぼす因子について明らかにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画案では粒子内部を観察するためにミクロトーム用ダイヤモンドカッター(約300千円)の購入を予定していた.実験を本格的に始めるにあたり,既に所有していた古いダイヤモンドカッターを用いて粒子の切断を行ったところ,樹脂表面に数本の刃こぼれに起因するスジが確認されたが,簡易的な評価は十分に行うことができた.粒子の合成条件には年度末付近になって確立されたため,本年度のダイヤモンドカッターの購入は見送り,次年度に購入することにした.このため,当該助成金との差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
現在使用中のダイヤモンドカッターは既に歯こぼれが生じており,破損と同時に当初の計画通りミクロトーム用ダイヤモンドカッターを購入する予定である.
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