研究課題/領域番号 |
16K06738
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50354832)
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研究分担者 |
井川 直樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究主幹 (60354833)
朝岡 秀人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主席 (40370340)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / ナノチューブ / イオン照射 / 透過型電子顕微鏡 / その場観察 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、本課題の主目的の一つであるSiCナノチューブのイオン照射による微細構造変化の素過程を解明するため、SiCナノチューブのイオン照射による微細組織変化の透過型電子顕微鏡(TEM)その場観察を行った。具体的には、200keV Siイオンを室温で、多結晶SiCナノチューブ及びC-SiC複合ナノチューブに照射し、TEM中その場観察を行った。その結果、多結晶SiCナノチューブでは、電子線回折結果から、照射量が増加すると共に、結晶に由来するスポットが徐々に弱くなり、約1.6dpaでほぼ完全にハロー形状に変わりアモルファス化することが分かった。また、ナノチューブの内径及び長さは、照射量が増加すると共に、一義的に減少することが分かった。一方で、ナノチューブの外径は、アモルファス化が完了する照射量が約1.6dpaまでは、一度増加し、その後、減少することを明らかにした。また、ナノチューブの壁厚は、一義的に増加した。C-SiC複合ナノチューブでも同様に、電子線回折結果から、SiC層に起因するスポットは徐々に弱くなることがわかった。一方で、カーボン層に起因する(002)面のスポットは、照射量が25dpaでもはっきりと観察されただけでなく、元々存在した(002)面のスポットとは90°傾いた位置に新たなスポットが形成された。照射後のC-SiC複合ナノチューブの詳細な微細組織観察を行った結果、SiC層は結晶格子が観察されずアモルファスであったが、カーボン層は、ナノチューブの長さ方向に平行な格子像が観察されただけでなく、新たにナノチューブの径方向に平行な格子像も観察された。C-SiC複合ナノチューブの内径及び長さは、SiCナノチューブと同様に照射量が増加すると共に一義的に減少した。しかしながら、外径は、一義的に増加することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多結晶SiCナノチューブ及びC-SiC複合ナノチューブのイオン照射による透過型電子顕微鏡その場観察を行い、それぞれの結晶構造変化及び形状変化の素過程を解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、先ずイオン照射前のSiCナノチューブの電気特性評価を行う。具体的には、SiCナノチューブを塗布したくし型電極を用いた電気特性評価と、透過型電子顕微鏡内で二端子ホルダーを用いた電気特性評価の二種類の方法で、電気特性評価を行い、試料のバリスタ特性等を評価する。これにより、直径が100nm程度のセラミックナノチューブの電気特性評価方法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
透過型電子顕微鏡その場観察が予定よりも順調に行われ、さらに良好な結果が得られたために、予定よりも試料作製用の原材料を購入する必要が無く、さらに、擬似その場観察用イオン照射試料ホルダー等の購入も予定よりも少なく済み、平成29年度にそれらを購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に、試料作製、及び、イオン照射擬似その場観察をさらに実施するために、試料の原材料、及び、擬似その場観察用イオン照射試料ホルダー等を購入する。
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