半導体デバイスの三次元実装、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やフォトニクスデバイスのパッケージングなどの分野で、熱損傷や熱応力を低減できる低温接合技術が求められており、活発な研究が進められている。インジウム(In)は様々な表面に濡れ広がり、融点が156.7℃と低く、延性・展性に富むため、異種材料の熱膨張係数差を吸収することのできる低温鉛フリーはんだとして使用される。しかしながら、Inは錫(Sn)と比較してもその酸化物生成自由エネルギーが小さく、酸素と結合しやすい金属のため、低温での接合を実現するには、酸化膜除去が重要である。 本研究では、水素ラジカルを用いたIn酸化膜除去プロセスの開発を目的に、フラックス残渣洗浄が不要なInバンプ形成法の開発と水素ラジカル処理の他の材料への適用可能性を検討した。 昨年度実施したメタルマスクによるスクリーン印刷とリフローは、量産性に向くバンプ作製法として広く用いられているが、微細化や挟ピッチ化に限度がある。そのため、メタルマスクではなく厚膜フォトレジストを用いて印刷およびリフローを行うプロセスを検討した。3インチウェハ全体に厚さ50 μm程度のレジスト層を形成し、ソフトベイクの後に露光・現像して、パターニングを行った。開口部にInペーストを充填し、水素ラジカル処理(ステージ温度200 ℃、照射時間200秒)とリフローを行い、厚膜レジストの剥離を行なうことで、Inバンプを作製する。フラックス残渣洗浄が不要なInバンプ形成が可能であることを示した。 また、In以外の材料として、銅(Cu)の酸化膜除去に水素ラジカル処理を適用し、再酸化抑制効果があることを示した。
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