研究課題/領域番号 |
16K06742
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
熊井 真次 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00178055)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 異種金属接合 / シミュレーション / 衝撃圧接 / 界面組織 |
研究実績の概要 |
電磁力や爆薬の爆轟により、数マイクロ秒オーダーの極短時間で衝撃圧接された異種金属接合界面には、通常の溶融接合や固相接合では見られない非平衡相で構成される中間層が形成されることがある。本研究では、従来取り組んできた衝撃圧接機構に関する研究成果をベースに、衝撃解析手法と熱解析手法をリンクさせ、衝突点における両金属成分の分散(混合)挙動、衝撃圧接界面における圧力上昇と温度上昇、その後の熱拡散による冷却(温度低下)挙動をシミュレーションし、これを実際の衝撃圧接界面組織と突き合わせることで、異種金属衝撃圧接界面における非平衡相の形成機構を解明することを目的としている。 前年度においては、異種金属(Al/CuならびにAl/Fe)を爆発圧接法および電磁力衝撃圧接法の両手法を用いて高速傾斜衝突させ、接合界面の波状模様や中間層の形状、組成、構造を調べた。また、衝撃圧接挙動を構成する3つの過程、すなわち爆薬の爆轟や電磁力による板材の衝突過程、波状界面の形成過程と接合界面の温度上昇過程、接合界面の冷却ならびに凝固過程をおのおの再現する数値解析モデルを考案し、これらを使用して異種金属衝撃圧接界面における物質移動と温度変化を再現した。 平成29年度は、Al/Fe衝撃圧接界面について詳細な調査を行い、接合界面には、AlとFeが直接接合した部分に加え、局所融解部が急冷された凝固組織を呈する中間層や、金属間化合物粒子が分散した、AlとFeが溶融することなく機械的に混合した中間層が形成すること、そして中間層の形態や界面での存在比率が接合条件によって変化することを見出した。 また、電磁成形において、材料と型との界面での塑性流動ならびに温度変化に関する検討や、純Al同士の電磁圧接を併せて行い、Alにおいては純金属であっても、電磁圧接材の接合界面や電磁成形材の最表面にアモルファス相が生成することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異種金属衝撃圧接界面における非平衡相形成機構を解明するには、接合界面における局所的な圧力や温度変化によって引き起こされる両金属の混合、機械的な合金化ならびに局所溶融やその後の急速凝固等の要素を総合的に理解しなくてはならない。そのために、平成29年度においては、電磁力や火薬の爆轟による衝撃圧接だけではなく、同じ衝撃力を利用する電磁成形において、成形する材料と型との界面においてどのような塑性流動が起こるのか、どのような温度変化が生じるのかについて検討を行った。 また、異種金属のみならず純金属同士の電磁圧接を行い、得られた接合界面組織について詳細な組織観察を行った。また、これらに関し数値解析を併せて実施し、物質移動や温度変化を調べた。その結果、たとえ純金属であっても、電磁圧接材の接合界面や電磁成形材の最表面にはアモルファス相が生成する可能性があることを見出した。これは異種金属接合界面における非平衡相形成機構を解明する上で非常に有益な知見である。 このように衝撃接合のみに囚われず、衝撃成形も研究対象として取り扱ったことにより、当初予測していなかった発見をすることができた。よって総合的に見て、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した、純Al/SPCCならびに純Al/SS400を用いたAl/Fe異種金属爆発圧接材の接合界面の組織観察により、接合界面には、AlとFeが直接接合した部分に加え、局所融解部が急冷されたことによって生じたと考えられる凝固組織を呈する中間層や、その中に金属間化合物粒子が分散した、AlとFeが溶融することなく機械的に混合されたと考えられる中間層が生じることが明らかとなった。さらに、これら特徴的な中間層の形態や界面上での存在比率が接合条件によって変化し、これが接合界面における温度上昇ならびに高速塑性変形の程度に依存して変化することを見出した。 そこで今後は、電子顕微鏡による詳細な組織観察ならびにX線による組成分析等の実験的手法と、数値解析により接合界面近傍の物質移動と圧力ならびに温度変化をシミュレーションする手法を併用して、これら中間層の形成過程について明らかにしていく。 さらに電磁力衝撃圧接界面の中間層と爆発圧接界面の中間層を比較し、接合条件(衝突速度、衝突角度、衝突エネルギー)が各中間層内で形成される非平衡相の種類や形態にどのような影響を与えているのかについて検討を行うことにより、異種金属衝撃圧接界面における非平衡相の形成機構の解明に繋げていきたいと考えている。 また溶融状態からの急冷凝固によってどのような非平衡相が生成するのかについて検討を行うため、接合実験とは別にメルトスピン法や高速双ロール鋳造法を用いて金属・合金の急冷試料を作成し、その組織解析を行う計画である。これにより合金組成や冷却速度と非平衡相の種類との関係を明確にすることができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(平成30年度)に、本研究課題の成果発表をする場として最適な国際会議ICAA16(第16回アルミニウム合金国際会議)がカナダで開催される。よって、これに参加し、3件の成果報告を行う予定である。このように当該会議への参加費、旅費として使用する目的で次年度使用額が生じたものである。
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