研究課題/領域番号 |
16K06745
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋田 昌樹 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50291034)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レーザー光電界加工 / 微細構造形成 / 機能性付与加工 / 金属・半導体材料 / 安定制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、赤外短パルスレーザーの光電界加工により固体表面に自己形成する微細な構造体の「サイズ」とその「結晶」を同時に制御し、新しい機能性付与金属表面加工の基盤を確立することを目的としている。特に、新しい結晶(非晶質)を付与した微細構造体を作成し、従来法において非晶質が実現されなかった銅、金、銀、白金といった実用上最も重要な金属に対して、材料種と短パルスレーザーの照射条件に関する基礎データから短パルスレーザーによる自己形成微細構造体のサイズとその結晶の関係を明らかにするとともに微細構造体形成機構の解明を試み安定した非晶質金属微細構造体作成のための加工技術を構築する事にある。この目的を達成するため初年度は、1)赤外短パルスレーザー光電界加工による金属表面の微細構造体形成、2)金属微細構造体の結晶評価、3)赤外短パルスレーザー光電界加工による金属微細構造体の結晶制御、に取り組み金属及び半導体表面に波長よりも短い周期の微細構造体が組織的に形成できることを確認した。結晶性評価ではレーザーフルーエンスを制御することで非晶質化させたり結晶性を保持できる事が明らかになった。また、ダブルパルスビーム照射する事でこれまで達成できなかった微細構造体の周期性を保持したまま加工深さを制御する事に成功した。これらの成果はレーザー波長以下のサイズの微細構造体を固体表面に形成する有効な加工手法となりうるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面機能性付与加工による微細構造の安定形成のためには、その形成機構を明らかにしなければならない。この課題を解決するため、表面にできる「かたち」についてはFISCOF2(Particle in Cellシミュレーション)を用いて考察し、表面に形成される低密度プラズマ密度(固体密度の約1/10程度)が、そのサイズを決定する上で重要な役割を果たしていることを見出した。一方、構造体の「結晶性」の制御については、レーザー照射された固体より飛散する高エネルギー荷電粒子の成分が寄与していることをSRIM2010(モンテカルロシミュレーション)により明らかにした。これらの知見は実験結果と対比することで得られたもので、材料が変わった時にも適用できる有用な成果である。当初計画していた研究成果を得ており概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、表面機能性付与加工による微細構造形成について提案した物理機構の妥当性を検証し、種々の材料に対して安定形成を実現するため以下の課題を実施する予定である。①非晶質化した金属微細構造体の組成分析、②赤外短パルスレーザー光電界加工により金属表面から放出する荷電粒子のエネルギー測定、③非晶質金属微細構造体作成の基盤構築、④機能性付与加工金属の新しい機能探索、これらの成果から種々の材料に対して表面機能付与加工の基盤を構築する予定である。
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