研究課題/領域番号 |
16K06748
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
木村 真晃 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (90285338)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 摩擦圧接 / 線形 / 異種材継手 / 低入熱 / 接合現象 |
研究実績の概要 |
今世紀の「ものづくり」を持続させ,それを次世代へと繋げるためには,現在よりも一層の省エネルギー化,低コスト化を実現させながら生産活動を実施することが強く望まれている.その中の一つに,構造物などを溶接・接合する技術がある.摩擦熱を利用して固相状態で部材同士を接合する摩擦圧接法は,回転運動を利用して部材同士の接合を行うことから円形の断面形状を有する部材の接合には適しているが,非円形の断面形状を有する部材の接合には適していない.そのため,非円形の断面形状を有す部材の接合にはほとんど利用されていないのが実状となっている.本研究課題は,研究代表者がこれまでに提案してきた回転摩擦圧接における低入熱摩擦圧接法や接合自己完了型摩擦圧接法などを提案するために製作してきた接合実験装置に組み込んできた様々な工夫やノウハウを活用し,非円形の断面形状を有す部材の接合も容易にできる往復直線運動を利用した低入熱線形摩擦圧接(LFW)装置を新たに開発し,これまで明らかにされていないLFW現象の解明を行うとともに低入熱状態で接合できる異種材継手が容易に作製できる接合手法の提案を行うものである.その中で本年度は,将来の異種材の組み合わせに対してLFW接合を行うための基礎データを得るために,純Cuとステンレス鋼の組み合わせに対して回転式の摩擦圧接実験を行った.そして,実際に接合面のどの部分から接合され始め,どの時点で接合を完了すれば接合部から破断しない健全な継手が得られるかなどを把握し,純Cuとステンレス鋼との接合メカニズムの解明に向けた各種データの取得を実施した.また,実際のLFW装置を作製するための性能を決定するための第一弾として,同種材料を対象としたLFWでの接合部の温度のシミュレーションも試みた.そして,接合部の焼付きを考慮した接合部の温度をシミュレートすることができる可能性を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,交付申請書において以下の2項目を実施することとして申請を行っている. 1) 低入熱異種材継手の圧接条件の確立 2)低入熱LFW装置の製作 このうち,1)に関しては,申請者が所有している回転運動を用いた摩擦圧接装置を用い,将来の異種材のLFW接合に関連するデータを得るために,純Cuとステンレス鋼の組み合わせについて接合実験を行っており,それに関する知見をいくつか得ている.一方,2)に関しては,申請後の研究により,申請時の偏心カムとギアの組み合わせによる直線運動機構では接合に耐えることは難しいことが判明した.しかしながら,偏心カムを増やし,かつギアの組み合わせを変えることにより新たな直線運動機構を提案し,それを基にしたCAD/CAM解析を実施した.その結果,新たに提案した直線運動機構により,接合に耐えうることができるLFW装置を提案することができた.そして,その結果を踏まえ,樹脂材料などが接合できる簡易なLFW装置を作製し,その動作確認を行い,作製した簡易なLFW装置で樹脂材料を接合できることも分かった.さらに,同種材料の場合におけるLFW現象の把握と健全な継手が得られる接合条件の確立を目指すためには,接合面温度のシミュレーションが必要であるとの考えより,同種材料では接合面で焼付きを生じて接合されることから,それを模擬したLFWの接合面のシミュレーションを新たに行うことができた. 以上のように,当初の計画とは異なり低入熱LFW装置の完全製作には至っていないものの,それに近い内容に研究が進捗していることから,②のおおむね順調に進展しているとして判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,交付申請書において平成29年度では,以下の3項目を実施することとして申請を行っている. 3)低入熱異種材継手の圧接条件の確立(続き) 4)低入熱LFW装置による接合実験の実施 5)LFW現象の把握と健全な継手が得られる接合条件の確立(同種材料の場合) 3)に関し,将来の異種材のLFW接合に関連するデータを得るため,前述した純Cuとステンレス鋼の組み合わせ以外にも純CuとAl合金,純Alや鉄鋼材料などの組み合わせに関し,回転摩擦圧接を行うことで接合現象と母材強度との関連に関するデータを蓄積する.また,4)に関して,前述したように,簡易LFW装置を作製することまではできているが,低入熱LFW装置の完全製作までには至っていない.特に,実際のLFW装置を作製する際には,新たに提案した直線運動機構を利用する必要があるが,その機構を用いて装置を作製するとなるとかなり大がかりになり,それにともないある程度の時間も必要となってくるため,本申請の研究期間では研究が完遂できない可能性もある.しかしながら,今回作製した簡易LFW装置は多少の剛性がある装置となっていることから,Alのような軽金属材料の接合はできる可能性がある.また,幸いにもこの簡易LFW装置を取り付けることが可能な工作機械(卓上ボール盤)を入手できたため,これを利用することである程度の計装化が可能となる.よって,これらを用いて接合条件別のデータを入手することができる低荷重スペックの低入熱LFW装置を作製する.また,前述と同様に,同種材料における接合面での焼付きを模擬した接合面のシミュレーションを発展させ,その精度をより高めることも実施し,その進捗状況によっては焼付きを生じて接合される機構ではない異種材料を用いた場合のシミュレーションも試みる.このような内容を実施することで,上記の5)に近い内容の一助とする.
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