研究課題/領域番号 |
16K06753
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
近藤 行成 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (70277276)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 色材 / 有機結晶 / 金色 / 銀色 / アゾベンゼン / スチルベン |
研究実績の概要 |
これまでにアゾベンゼン骨格およびスチルベン骨格を有する分子を合成し、それぞれから金色並びに銀色光沢有機結晶が得られることを見出している。平成28年度では、これらの分子の結晶性および水溶性を向上させる目的で、アミド結合を有するアゾベンゼン分子とベンズアミド基を有する分子の合成を試み、それぞれから金色および銀色光沢有機結晶を得ることに成功した。 前者のアゾベンゼン分子については、分子間水素結合が認められ、結晶性の向上が期待される。また、後者の分子については、分子内にベンズアミド基を有するため、これまでに銀色光沢有機結晶を与えることが分かっているスチルベン分子に比べ、極性が高く、汎用の極性有機溶媒への溶解性の向上が期待され、インクジェット用インク色材としての応用できるものと考えられる。 上記の合成と並行して、金色および銀色光沢結晶が得られる機構についても検討した。その結果、アゾベンゼン分子やスチルベン分子は、face-to-face型の集合体を形成しながら、厚さが約2 nmの単分子層を形成していることが明らかになった。両分子の単結晶は、単分子層が積み重なった厚さが数μmの鱗片状結晶であり、これらの鱗片状結晶が、結晶化後の実験操作により、ろ紙上に積層されることで金色または銀色光沢を呈することが分かった。すなわち、ろ紙上に積層された鱗片状単結晶の結晶界面で光が多重反射され、その結果として、結晶に光沢が付与されることを明らかにした。現在、この機構について論文発表を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属フリーなメタリックインクの開発を目的とする本研究では、金色および銀色光沢有機結晶のライブラリーを増やすことが大切であり、その点で、平成28年度は数種類の新しい分子が金色および銀色光沢有機結晶を形成することを明らかにできた。 また、従来のインクジェットプリンターへの応用を考慮した場合、本研究の分子に、高い結晶性と極性有機溶媒に対する溶解性を付与することは極めて重要である。平成28年度の研究で、アミド結合を有するアゾベンゼン分子を合成し、これが分子間水素結合を通して金色光沢有機結晶を作ることを見出した。また、ベンズアミド骨格を有する分子を合成し、これが銀色光沢有機結晶を作ることも明らかにすることができた。以上、金色または銀色光沢を呈する、結晶性の高い分子と極性のある分子の合成に成功し、平成29年度以降の研究に大いに役立つ成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アミド結合を有するアゾベンゼン分子が金色光沢有機結晶を作ることが分かったことから、この分子の高い結晶性を利用した金色光沢の調製を試みる。具体的には、汎用の極性有機溶媒に溶解させ、スピンコート法により、ガラスや紙等の基材表面に金色光沢を付与する研究を進める。 一方、ベンズアミド骨格を有する分子が銀色光沢有機結晶を作ることも明らかにしている。この分子は汎用の極性有機溶媒への溶解性が高いと期待される。今後は、この分子の極性有機溶媒への溶解性を調べるとともに、インクジェットプリンターへの応用を目的として、極性有機溶媒からの結晶の調製について検討する。また、結晶性を高めるために、アゾベンゼン分子で結果が得られている、アミド結合をベンズアミド骨格を有する分子にも導入し、スピンコート法による基材上での銀色光沢の発現についても研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に必要な試薬のうち、ごく一部について、当研究室の在庫を使用したため、その分が次年度使用額として残った次第です。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を含め、配分の全額を使用する予定です。
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