研究課題/領域番号 |
16K06756
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
千葉 誠 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (80390384)
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研究分担者 |
安住 和久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60175875)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 防食 / 塗膜 / 自己修復 / 表面処理 / マイクロカプセル / 機能性表面 |
研究実績の概要 |
金属材料の防食のため,広く用いられている塗装だが,塗膜に微細な欠陥が生じると,局部腐食が発生し,金属材料に致命的な損害が生じる.このため,我々の研究グループでは,長期間にわたり欠陥のない健全な状態を保つことできる自己修復性ポリウレタン防食塗膜を開発を目指し,研究をおこなっている. 我々の研究グループで開発している塗膜の自己修復機構は以下である.まず,高反応性液相を内包したカプセルを均一分散させた塗膜を金属材料基盤上に形成する.こうすることで,塗膜に微小な欠陥が生じると同時に塗膜中のカプセルも割れ,中に含まれる高反応性液相が外部に流出する.これが空気中の水分や酸素などとすみやかに反応し,塗膜を再生させるというものである.このため,塗膜の自己修復には分散させるカプセルの形状,ならびに内部構造が大きく影響すると予想される.すなわち,カプセル形状が均一であり,内部に十分な量の修復剤を有していることが重要であると考えられる. このようなカプセルの合成法として,次のようなものが考えられる.まず,激しく撹拌したポリオール‐界面活性剤水溶液に,ポリウレタン前駆体であるプレポリマーを滴下するとプレポリマーは油相であるためエマルジョンが形成する.さらに油相/水相界面でのみプレポリマーとポリオールが反応すると,ポリウレタンシェルに修復剤を内包したカプセルが合成される. 今年度はカプセルに内包される修復剤量を最適化するカプセル合成条件,特にカプセル合成時に修復剤が固化するのを防ぐ添加剤の種類や量の影響について調査した. この結果,カプセル合成の際にキシレンなどの有機溶媒を添加することで多くの修復剤を有するカプセルが合成でき,これらを分散させ作成した塗膜は高い自己修復能を有することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はカプセル合成条件と塗膜の自己修復能との関連について系統的に調査した.この結果,カプセル合成条件とカプセルに内包される修復剤量,ならびにこれらを修復剤内包カプセルを分散させた塗膜の自己修復能を定性的に評価することに成功している.これらの結果は国内専門ジャーナル2報(掲載済み1報,掲載決定1報)および国際誌1報(掲載決定),および国際学会で3件,国内学会で8件の発表をおこなうなど予想以上の成果が得られている. 一方で,本研究テーマの目的である自己修復能の定量的な評価については十分な成果が得られていないのが現状である.これは作成している塗膜の部位により修復能に大きなばらつきがあるため,測定結果の再現性が得られていないためである.現在,セルの選定は終わっているが,測定条件も大まかにしか固まっていない状況であり,こちらについては予定よりも進展が遅いことを認めざるを得ない. 上記より本研究テーマ全体として評価すると概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現在遅れている自己修復性塗膜の修復能を定量的に評価するための研究を現在行っている.現在,問題となっているのは塗膜の部位により修復能が異なることが定量評価に対し大きな問題となっている.これについては塗膜内でのカプセル分散が不均一に起きており,一部の箇所に凝集していることが原因と考えており,塗膜中へのカプセル分散条件の最適化を図っているところである.塗膜内への均一分散ができれば塗膜の自己修復能を電気化学インピーダンス法により評価できるものと考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
電気化学セル,シールドボックスを自作することにより,あるいは研究に必要不可欠な貴金属類(白金線,白金メッシュ等)を他設備で使用していたものを流用できたため,大幅に物品費を減額することができた.その一方で,研究成果充実にともなう研究発表会参加などの旅費が支出が増額している.
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次年度使用額の使用計画 |
上記他設備より流用していた貴金属類を購入予定である.また,研究成果報告のため,海外出張1件を予定している.
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