金属材料の防食法として広く用いられる塗装は,微細な欠陥が生じたさいに,局部腐食が発生し金属材料に致命的な損害が生じることが知られている.このため,我々の研究グループでは,長期間にわたり欠陥のない健全な状態を保つことができる自己修復性ポリウレタン防食塗膜の開発を目指し,研究をおこなっている. 我々の研究グループで開発している塗膜の自己修復機構は以下である.まず,液体状塗膜修復剤を内包したカプセルを均一分散させた塗膜を金属材料基盤上に形成する.こうすることで,塗膜に微小な欠陥が生じると同時に塗膜中のカプセルも割れ,中に含まれる修復剤がカプセル外部に流出する.これが空気中の水分とすみやかに反応し,塗膜を再生させるというものである.このため,塗膜の自己修復には分散させるカプセルの形状,ならびに内部構造が大きく影響すると予想される.すなわち,カプセル形状が均一であり,内部に十分な量の修復剤を有していることが重要であると考えられる.このようなカプセルの合成法として,次のようなものが考えられる.まず,激しく撹拌したポリオール‐界面活性剤水溶液に,ポリウレタン前駆体であるプレポリマーを滴下するとプレポリマーは油相であるためエマルジョンが形成する.さらに油相/水相界面でのみプレポリマーとポリオールが反応すると,ポリウレタンシェルに修復剤を内包したカプセルが合成される. 本プロジェクトではこのように合成したカプセルを分散させた塗膜を合成し,この自己修復能について SEM を用いた表面観察,ならびに EIS を用いた電気化学的手法により評価した.この結果,自己修復性塗膜を金属材料表面に形成することで傷などの欠陥が生じた際にも高い耐食性を維持でき,この修復能にはカプセル構造が大きく関連することが明らかとなった.
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