研究課題/領域番号 |
16K06759
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山根 大和 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科(物質化学コース), 教授 (70332096)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ処理 / イオン注入 / 有機無機ハイブリッド太陽電池 |
研究実績の概要 |
これまで本研究提案者は物理的処理法である低温プラズマ処理法やイオン注入法の複合処理を用いて、多孔質チタニア半導体電極における電子の流れを増大させてセル変換効率を増大させるための多孔質チタニア半導体電極の表面・界面特性の改善技術を開発した。すなわち、①チタニア半導体電極への色素吸着量を増大させるための低温プラズマ処理技術、②光電流(Jsc)を増大させるための窒素イオンドーピング技術、遷移金属イオンドーピングによる伝導帯準位制御による開放端電圧(Voc)増大技術を独自に開発した。本研究では、物理的複合処理法である低温プラズマ処理法やイオン注入法を用いたカチオンとアニオンのコドープ処理技術の開発によりペロブブスカイトや酸化チタン表面・界面ナノ構造を制御することで、有機無機ハイブリッド太陽電池の光電変換効率を向上させるための表面・界面特性や表面バンド構造の最適化を図ることを検討している。平成28年度の本研究では、ペロブスカイト型太陽電池の高効率化を目的として、ペロブスカイト型太陽電池におけるTiO2 層、ペロブスカイト層及びp 型有機半導体の界面に対する低温プラズマ処理やイオン注入処理などの物理的・化学的処理による改質効果を検討した。「試験項目」として酸化チタン(TiO2)電極およびペロブスカイト層への低温プラズマ処理の検討を行った。「試験内容」としてペロブスカイト層-TiO2 層およびペロブスカイト層-spiro-MeOTAD 層の各層間の界面特性を改善する目的で、低温プラズマ処理により酸化チタン(TiO2)電極およびペロブスカト層表面の物理的エッチング効果や水酸基を生じる化学的処理効果により、短絡光電流(Jsc)の増大および開放端電圧(Voc)の増大を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度本研究では、ペロブスカイト型太陽電池の高効率化を目的として、ペロブスカイト型太陽電池におけるTiO層、ペロブスカイト層及びp 型有機半導体の界面に対する低温プラズマ処理やイオン注入処理などの物理的・化学的処理による改質効果を検討した。低温プラズマ処理には現有する申請者らが開発したイオン注入装置付属のベルジャー型低温プラズマ装置を使用した。処理効果が最大となるアルゴンプラズマ処理条件を検討するために、トリプルプローブによる電子温度・電子密度測定を行った。アルゴンプラズマによる表面反応は電子温度・電子密度だけでなく、ラジカル種・ラジカル密度にも依存する。したがって、プラズマ発光分析システムによるラジカル種・ラジカル密度のモニタリングも必要不可欠である。低温プラズマ処理後、現有のX線光電子分光分析装置(XPS)による表面分析や原子間力顕微(DFM)による表面形態構造観察を行うことで電極やペロブスカト層の表面形態構造や化学組成状態を確認した。作製した太陽電池は、光電変換効率(η)の測定と同様に分光感度を測定した。今年度「数値目標」とした短絡光電流(Jsc)2mA 増(10%増)、開放端電圧(Voc)0.1V増(10%増)、光電変換効率(η)10%増を達成する手がかりをこれまでに得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度本研究では、昨年に引き続きペロブスカイト型太陽電池の高効率化を目的として、ペロブスカイト型太陽電池におけるTiO層、ペロブスカイト層及びp 型有機半導体の界面に対する低温プラズマ処理やイオン注入処理などの物理的・化学的処理による改質効果を検討する。「試験項目」としてはカチオンおよびアニオンドープ処理の検討を行う予定である。「試験内容」としてカチオン(Zr2+,Y3+,Hf4++,V5+)ドープ処理、アニオン(N)ドープ処理によって開放端電圧(Voc)、短絡光電流(Jsc)および光電変換効率(η)の増大を検討する。ドナー準位として、作用①ドナー準位の電子は熱または光吸収エネルギーによりTiO2 伝導帯に励起される。作用②TiO2 伝導帯に励起電子を与えた状態で、増感剤色素ペロブスカイト層からの励起電子を受け取り、作用①と同様にこの励起電子はTiO2 伝導帯に励起する、という2つの作用の発現がある。したがって作用①によりTiO2 電極中の電子濃度が高くなり、光電流を増大させ、さらに作用②を有効に活用するためにドナー準位を制御できれば、現状の増感剤色素ペロブスカイト層のLUMO 準位よりもポジティブ側に位置する増感剤色素ペロブスカイト層も使用可能となる。したがって、現状の増感材増感剤色素ペロブスカイト層よりも狭いHOMO-LUMOギャップを持つ、すなわち長波長光吸収を示す増感剤色素ペロブスカイト層の使用が可能となり、かつドナー準位とTiO2 伝導帯のエネルギーギャップに相当する長波長光も有効に利用されることになり、必然的に光電流が大幅に増大することになると考えている。この研究をさらに進め、酸素欠陥準位の制御を目指すことが目標であり、目標達成のための手がかりは既に得ている。 さらに「試験項目」として(カチオン/アニオン)コドープ処理を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付内定が決定したのが10月21日であり、すでに28年度の研究は進展させており、申請予定であった類似の装置を使用して実験を行い、その結果を基に解析分析をすることが可能であったため、計画を変更することとし、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に本研究で開発している太陽電池の光学特性評価を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。また,国内外の学会参加費も支出予定である。
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