研究実績の概要 |
硬質相と結合相の親和性を向上させる元素探索のため、TiCN-25(Ni,Fe)3AlにMoとWを添加した材料を作製し、機械的特性を評価した結果、W添加による機械的特性向上効果が高いことが分かった。 プロセス中の結合相組成変動による金属間化合物生成の阻害されることを懸念して、硬質材料の結合相のTEM観察を行ったところ、結合相の電子線回折に規則格子反射が認められ、結合相はNi3Al構造を有することがわかった。 さらに、WC量を変化させたTiCN-xWC-25(Ni,Fe)3Al(x= 0, 20, 30, 40, 60: それぞれ0WC, 20WC, 30WC, 40WC, 60WCと称す)を作製し、それらの特性評価と組織・組成分析を行い、WC添加が及ぼす特性への影響を検討した。WC量の増加とともに機械的特性は増加にあるが、焼結時間が機械的特性に及ぼす影響に相違が認められた。0WCでは焼結時間が長くなるほど、相対密度、機械的性質が低下した。20WC、30WC、および40WCでは、焼結時間とともに相対密度、機械的性質は向上した。60WCでは焼結時間とともに相対密度は高くなるが、機械的性質が低下した。 0WCではTiCNと(Ni,Fe)3Alの濡れ性が悪いことから、焼結時間が長くなることでTi(C,N)と(Ni,Fe)3Alの分離が進み、より多くの欠陥が導入されて密度が低下し、結果として機械的性質が低下したと思われる。焼結性を改善するWCが添加された20WC、30WC、および40WCでは焼結時間が長くなることで欠陥が少なくなり、相対密度、機械的性質ともに向上したと推察される。60WCではWCが主相となることから、組織形成過程がWC中へのTiの固溶となることでWC相と(Ni,Fe)3Alの界面強度が低下し、機械的性質が悪化したと考えられる。
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