研究課題
錯体水素化物は、水素を高密度に含有する錯イオンによって形成され、水素貯蔵材料への応用が期待される。錯体水素化物を水素貯蔵材料として利用するためには、錯体水素化物の形成(水素化)・分解(脱水素化)反応の機構解明が課題の一つに挙げられる。申請者らは、錯体水素化物を形成するための前駆現象を初めて見出し、この現象により、錯体水素化物が、一般的に知られている反応温度(摂氏 数百度以上)よりも低温(摂氏 30度)で形成される結果を得ている。そこで、本研究の目的は、申請者らが発見した前駆現象に着目し、錯体水素化物の水素化・脱水素化反応の素過程を結晶構造と振動ダイナミクスの観点で評価して、錯体水素化物の水素化・脱水素化反応機構を解明するとともに室温近傍で水素化反応が進行する水素化物を探索する。更に、本研究で得られた知見をもとに高密度に水素を貯蔵する材料開発のための合成指針を構築する。平成30年度は、錯体水素化物の脱水素化過程を熱分析、X線・中性子回折、中性子非弾性散乱を用いて観測した。更に脱水素化後の試料を再水素化することで錯体水素化物が再形成されることが明らかになった。この一連の水素化・脱水素化・再水素化反応における結晶構造は、構成する金属元素の配列が維持されていた。更にマグネシウムを含む類似の金属間化合物が室温近傍で水素化反応が進行し、その反応前後での金属配列は、維持されることが明らかになった。これらの結果から水素化・脱水素化反応前後での金属配列の維持が、室温近傍で高密度に水素を貯蔵する材料設計指針の重要な要素の一つに挙げられる。
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