研究課題
本研究では、赤外分光型熱イメージング同時測定法の開発を行い、サーモスペクトロスコピーと称する新しい分野を世界に先駆けて切り開いた。この方法によれば、赤外分光スペクトルの空間的な2次元分布(赤外分光イメージング)と熱画像(熱輻射強度分布)(2次元温度分布)を同時に観測し、デジタル画像として保存することができ、世界でも最も高倍率の赤外顕微レンズにより、ミクロスケールの空間分解能を可能とした。熱伝導のミクロスケールの可視化のみでなく、化学反応や相転移を伴う動的な過程の分光情報も同時に取得することで、熱伝導に及ぼす化学構造の変化の寄与を正確に見積もることができるようになった。このことは、従来困難であった、化学組成あるいは状態の変化する系での輻射率ー温度変換による2次元の温度校正を実験的に可能にし、このことの意義は大きい。かつ取得周波数は200Hz以上と、十分な速度での測定を可能としている。この方法論の確立のうえに、最終年度は、高分子複合系として、フィラー混合系、発泡系、およびバイオメディカル分野の生体組織のサーモスペクトロスコピーによる応用展開を実施した。特に、バイオメディカル分野の応用では、ヒト前立腺がん細胞の初期過程の赤外分光スペクトルを、サーモスペクトロスコピーの手法により、通常の赤外線スペクトルイメージングに比較してコントラストの明確な画像取得により、精度良い描画に成功し、赤外分光における熱輻射の見積もりの重要性についても指摘することができ、本方法論の有用性を示した。
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