研究課題/領域番号 |
16K06769
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
梅澤 修 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20343171)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 高強度合金 / 疲労 / 粒界 / すべり変形 / き裂 / 応力集中 |
研究実績の概要 |
高強度合金における疲労変形組織の形成と疲労き裂発生に関わる現象を見直し、飽和転位下部組織の形成後、どのような局所変形集中が生じて微小き裂(粒界割れや擬へき開割れ)を形成するのか、転位の局所集団励起運動の視点から新しい学理を構築する。すなわち、局所的な結晶界面に生じる「ひずみ不整合」とそれに起因する局所変形、内部疲労き裂発生に至る実験的検証とモデルの確立を得ることが目的である。 平成28年度は、不均一変形が顕著なTi合金(HCP)とSi鋼(BCC)をモデル材に用い、 (1)疲労損傷の変化と飽和転位下部組織との対応、(2)微視割れと対応する変形組織と変形モード、(3)想定される微視割れ面に生じるせん断応力場成分の緩和と微小き裂成長に及ぼす結晶配向の影響、の実験研究に着手した。具体的には、 (1)隣接結晶粒との拘束から変形勾配が生じた結晶粒、あるいは転位列が堆積した軟質粒と弾性応答する硬質粒との界面に生じたひずみ不整合の形成を確認した。 (2)試験片表面からき裂発生する条件において、レプリカ法を用いてき裂を検出し、その形成過程をデジタル画像相関(DIC)法による解析を確認した。また、破断試験片内に検出された副次き裂を対象にEBSDを用いて結晶方位回転および弾性場解析による検証に成功した。 (3)Ti合金において開口応力最大の{0001}を応力軸にほぼ平行に配置する繊維集合組織制御を施したモデル材を作製し、高サイクル疲労破壊のき裂発生について検証した。 以上より、ひずみ不整合にともなう微視割れから、同一結晶粒内での微視き裂成長、隣接する結晶粒への微視き裂成長あるいは微視き裂の合体という一連のモデル化への道筋がより見える状況となってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、(1)隣接粒間における飽和転位下部組織の違いによるひずみ不整合の場合分け、(2)ひずみ不整合による局所変形集中とき裂形成、(3)疲労き裂発生点を構成するファセットの結晶方位とその形成過程の実験的検討を進めてきた。得られた結果の考察と論文作成に向けて進捗を図る。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、以下に示す項目(1)~(3)の継続とともに、項目(4)転位の集団運動の理解に基づいたひずみ不整合を緩和する耐疲労組織設計に着手する。 (1)飽和転位下部組織とひずみ不整合との対応を明確に整理する。 (2)実験結果とモデルとの対比(相違)から、微視割れと直接関係する局所変形集中と変形モード、微視割れ面を開口する応力場について考察する。 (3)想定される微視割れ面先端に生じるひずみを緩和する活動すべり系について解析を適用し、微小き裂成長速度に及ぼす結晶配向の影響を評価する。
|