5 V級リチウムイオン二次電池に用いる正極の集電体材料として,高耐食性を有するニッケルフリーステンレス鋼の開発を進めた。これまで,ニッケルフリーステンレス鋼に窒素熱処理を施すことで表面特性が変化し,固体高分子形燃料電池用のセパレータ材料として優れた耐食特性を有することを見出してきた。そこで,本研究課題ではこれまでの研究をさらに発展させ,大型化および高電圧化が求められてきているリチウムイオン二次電池の正極側の集電体材料として開発を行うことを目的とた。 平成30年度は前年度に耐食性の向上が見られた試料のメカニズム解析のため反応性スパッタリング法を用いて,ステンレス鋼上に窒化クロム層を作製した。作製した窒化クロム層はスパッタリング後のポストアニーリング温度が高いほど,高い耐食性を有することが見出された。また,急速加熱が可能なIRイメージ炉を用いたニッケルフリーステンレス鋼への窒素熱処理も実施した。その窒素熱処理時の,雰囲気ガスである窒素ガスの圧力条件を再検討することで,耐食性がさらに向上することがわかった。この作製試料の元素分析を行ったところ,窒化クロムとは異なる要因で耐食性が向上した可能性がある結果が得られた。この耐食性の向上メカニズム解析には,さらなる研究が必要であることがわかった。
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