研究課題/領域番号 |
16K06774
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
板垣 吉晃 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (30325146)
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研究分担者 |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90200568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素透過膜 / アンモニア改質 / プロトン-電子混合導電体 / 電気泳動堆積法 |
研究実績の概要 |
1.プロトン伝導性セラミック薄膜の形成 平成29年度は,水素分離型アンモニアリフォーマーの開発のための基盤技術となるプロトン導電性セラミック薄膜の調整と評価を行った.難焼結性のプロトン導電体であるバリウムセレート系酸化物(BaCe0.8Y0.2O3-a; BCY)について,化学的合成によるBCYの微粒子化を達成し,さらにBCY粒子の高分散液の調製を行った.BCYの成膜法として電気泳動堆積法(EPD法)を用いることで,膜厚10マイクロメートル以下の薄膜を形成することに成功した.併せて,焼結時における,Ni-BCY堆積基板とBCY薄膜の収縮率をマッチングさせることで,1450oCの比較的低温での焼結により緻密化することが出来た.BCYの緻密薄膜化を行ったことで,600oC程度の低温においても改質セルにおける電解質の低抵抗化を図ることが出来た.本業績は,学術論文としてJournal of the Ceramoic Society Japanに掲載され,平成29年度の優秀論文賞に選出された. 2.リフォーマー用触媒基板の作製と評価 また,堆積基板であるNi-BCY基板の構造最適化を行なうため,Ni含有量を変化させながら伝導率,Niの分散性の評価を行った.Niは40wt%以上の含有率で1,000Scm-1以上の高い導電率を示し.Ni粒子の分散性についても0~30wt%の低Ni含有量のときと比べ,40wt%の方が高い分散性を与えることを見出した.さらに,マトリックスであるBCYにガリウムドープセリアを添加することで,Ni-BCYに比べて導電性とNi分散性が向上することを見出した.この成果は,秋季国内学会にて発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年~29年の2カ年で,アンモニアリフォーマの開発のための技術的な知見を得ることが出来た. 一つは,プロトン導電性酸化物の緻密薄膜化である.具体的には,BCY微粒子の化学的調製法,BCY粒子の懸濁液の最適化,Ni-BCY基板の面収縮率の調整,電気泳動堆積法における堆積条件の最適化を達成することが出来た.アンモニアリフォーマーにおいては,BCY-GDC複合酸化物の緻密薄膜化が必要となるが,本研究で得られた知見を応用することが可能である. 二つ目には,アンモニアリフォーマーにおける改質触媒基体である,Ni-BCY多孔質ペレットの構造最適化を行なうことが出来た.触媒基体の必須条件は,Niの高分散化による高いアンモニア分解活性と高い導電率である.平成29年度に実施した研究において,Ni分散性と導電性を両立した触媒基体の開発を行うこと出来た. 以上,アンモニアリフォーマーの作製のための基盤技術を確立できたことから,本研究がおおむね順調に進んでいると判断した.今後,これらの技術を組み合わせることで,リフォーマーの作製と評価を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年~29年の2年間で,アンモニアリフォーマーの実現に必要な,触媒基体と水素透過膜の作製に関する技術的な知見が得られた.平成30年度は,本研究の最終年度でもあることから,これまでに得られた知見を応用して,実際にアンモニアリフォーマーの試作と評価を行う予定である.リフォーマーの試作は,基本構造であるNi-BCY/BCY-GDC二層構造から開始する.BCY-GDC緻密薄膜の作製には,これまでに成果が得られた電気泳動堆積法を用いることとし,膜厚の調整を行いながら試作を行なう.試作セルの評価項目としては,予定どおり(1)水素発生速度と(2)水素純度とし,それぞれ,10,000mL/minと99.99%を達成目標とする.これらの評価項目に基づいて,Ni-BCY/BCY-GDC構造の性能評価を行なう.改良点として,平成29年度の研究成果で得られた,Ni-BCY-GDC基体の利用も検討する.本基体については,Niの高分散と高伝導率が実現可能であることを見出している.また,併せて電気泳動堆積法の堆積条件を調整することで,BCY-GDCの更なる薄膜も目指す. 平成30年度は最終年度であることから,これらの試作と評価に基いて,アンモニアフォーマーの実現可能性と高性能を得るための具体的な設計指針について総まとめを行なう.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の残額が,物品購入のための必要額に満たなかったことから,次年度に繰り越して使用することとしたため.
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