研究課題/領域番号 |
16K06776
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00335192)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ結晶アモルファス二相材 / 元素添加 |
研究実績の概要 |
ブラッシング電析法を用いて作製したナノ結晶/アモルファス二相Ni-W合金は引張強度2GPaを超える高強度を有しつつ、塑性変形を示す。しかしながら、室温保持により徐々に塑性変形量が減少する経時変化を示す。これは、アモルファス相の熱的安定度が低いためであると予想される。本年度はアモルファス相の安定度をあげるため、第三元素を添加を試み、その微細組織や、機械的性質の経時変化について調査した。 アモルファス相の安定化のためには、原子半径の大きく異なる元素を添加することが有効であることから、窒素の添加を試みた。添加手法としては、電析浴中に窒素ガスをバブリングすることにより電析中に窒素を溶存させながら、電析を行った。その結果、窒素の添加量はEPMAによって検知できなかったが、引張強度が200MPa程度増加したことから、微量ではあるが窒素は添加することができ、Ni-W-N三元合金を作製することができた。熱分析によってアモルファス相中の自由体積量を評価したところ、窒素添加により自由体積の減少が確認され、アモルファス相が安定化したと考えられる。Ni-W二元合金とNi-W-N三元合金における室温保持による機械的性質の変化を比較したところ、電析まま材の塑性伸びは同程度であったが、86.4ks保持材における塑性伸びはNi-W-N三元合金の方が平均1%程度大きかったことから、第三元素添加は経時変化の抑制に有効であることが明らかとなった。しかしながら、605ks保持材では塑性伸びはいずれの試料においても1.5%程度まで減少したことから、窒素添加による経時変化の抑制は十分ではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブラッシング電析法を用いて電析した電析まま材においてナノ結晶/アモルファスNi-W二元合金は高強度高延性を両立しているが、室温保持によって塑性伸びが減少する。この経時変化の原因がアモルファス相の熱的安定性が低いことであると考え、その熱的安定性を第三元素添加によって改善しようということが本研究の目的である。 本年度の研究から、窒素を第三元素として添加した際に、アモルファス相の熱的安定性が増加し、その結果、短時間室温保持による塑性伸び減少を抑制することができた。このことから、本研究の方針が正しいことが明らかとなったため、研究は順調に進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって、アモルファス相の熱的安定性を第三元素添加によって改善することができ、その結果、短時間室温保持による塑性伸び減少を抑制ることが明らかとなった。 しかしながら、窒素添加による長時間の経時変化抑制効果は十分ではなかったことから、他の元素添加を試みる必要がある。よって、今後はB添加やCo, Mo, Crなどの添加を試み、Ni-W-X三元合金の開発を行い、透過電子顕微鏡観察による微細組織観察、熱分析によるアモルファス相の安定性評価、また、その機械的性質の経時変化について調査する。
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