研究実績の概要 |
ブラッシング電析法により作製したナノ結晶/アモルファス二相Ni-W合金は引張強度2GPa以上の強度を示しつつ、十分な塑性変形能を有する。しかしながら、室温以上の温度における長時間保持により塑性伸びが徐々に減少する経時変化を示す。これは、アモルファス相の熱的安定度が低く、自由体積が低下し、ナノ結晶内において変形を担う転位が生じにくくなるためであると予想される。これまでにアモルファス相の安定度をあげるため、侵入型元素である窒素やボロンの固溶を試みたが、経時変化の抑制効果はほとんどみられなかった。本年度は侵入型元素ではなく、置換型元素であるコバルトもしくはモリブデンを固溶させることによる機械的性質の経時変化について評価した。 硫酸ニッケルとタングステン酸ナトリウムを主成分とする電析浴に硫酸コバルトもしくはモリブデン酸ナトリウムを添加することによって固溶を試みた。その結果、コバルト、モリブデンはそれぞれ最大5.2, 2.5at%固溶させることが出来、Ni-W-(Co or Mo)三元合金を創製することが出来た。この昨年度の窒素よりも多くの量を固溶させることが出来た。Ni-W-(Co or Mo)三元合金における室温保持による機械的性質の変化をNi-W二元合金と比較したところ、いずれの合金においても延性低下の抑制効果が確認できた。特に1.4%Mo添加材において2週間の室温保持によっても十分な延性を確保することが可能となった。
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