研究課題/領域番号 |
16K06777
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70315258)
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研究分担者 |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30137252)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | チタン合金 / 酸化被膜 / 白色化 / 生体材料 / 歯科用合金 / 耐剥離性 |
研究実績の概要 |
被膜/基板界面の組織観察と組成分析: Ti-Nb-Ta-Zr合金の結果では,合金表面における酸化反応には,Tiと異なる価数を持つ合金元素の拡散の関与が示唆されており,界面付近には合金元素濃化相が存在することが示されている.また,金属/酸化物界面構造は,純Tiのそれと比較しても組織連続性をもっており,STEM観察でも内部酸化的な酸化物生成が見られる,そこで,Ti-Nbにおいても耐剥離性と金属/酸化膜界面組織の同様の相関があるかを確認するため,集束イオンビーム(FIB)を用いたマイクロサンプリングにて酸化物/金属基 板界面の透過電子顕微鏡(TEM)試料の作製を行い,TEMまたは走査透過電子顕微鏡(STEM)にて界面の微細構造の形態学的,結晶学な情報を得た.その結果,高い耐剥離性を示す20 mol%Nbの場合,界面組織はSEMレベルではTi-Nb-Ta-Zr合金と類似した組織連続性の高い界面を形成するが,TEMレベルでは内部酸化は殆ど見られなかったことや,剥離部位の詳細な調査から,Ti-Nbの高い界面強度は,Nb添加による酸化膜の緻密化と酸化界面のボイド形成抑制に依るところが大きいと考えられた. 有限要素法による膜厚最適化: Ti-Nb合金酸化膜の膜厚や界面連続性の変化による力学パラメータの変化が膜の耐剥離性に及ぼす影響を,有限要素計算にて検討した.実験で得られた膜厚やヤング率等のパラメータを用い,剥離強度の膜厚依存性や,界面反応層挿入による力学パラメータの傾斜化の影響を見積もった.得られた結果から,剥離強度に及ぼす膜厚肥厚化の影響は一定以上の厚さではネガティブであり,界面反応層の存在による力学パラメータ傾斜化はポジティブな効果をもたらす事が定性的に示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ti-Nb合金作製,相同定,組織観察,審美性評価を当初計画しており,これらは当初計画より多数の組成を作製したうえで,一定の考察が可能な量と質のデータを得ている.既にその結果の一部は投稿論文にした. Tiの酸化挙動に影響する合金元素のうち,最も影響力の強いNbに加え,Taの影響についても調査を進めており,Nbとの違いも明らかになりつつある. 加えて,現在ヨーロッパの大学と国際共同研究開始を検討中であり,本研究課題から得られた知見に裏打ちされた白色化技術の応用研究を企業と推進中であり,また,本研究に関わる大学院生も積極的に学会発表を行い,発表内容について論文を投稿するなど,教育的効果も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より進めているTi-Nb合金の酸化膜/金属界面の微細構造の解析並びにTi-Ta合金の酸化挙動や膜の色調に関する調査を更に進めるとともに,複合材料としての酸化物被覆 Ti 合金の機械的性質の評価を行う.実験としては,引張りないしは曲げ試験及び,共振式薄板疲労試験による疲労試験を行う.この試験法は試料サイズが小さく済むため,薄板や矯正ワイヤ形状等,酸化膜の体積分率が高い状態での疲労挙動の観測を,疲労過程を追いながら短時間で行う事が可能である.これまでの研究結果や先行研究の知見と合わせ,Tiの高温酸化反応に与える添加元素の効果を明らかにし,Ti合金の高温酸化機構を明らかにする.更に,これまでの知見から明らかになりつつある,高耐剥離性に影響を及ぼす3つの因子,材料力学的因子,酸化膜構造および界面構造の寄与を切り分け,高い耐剥離性を維持する為の成膜設計方針や界面構造制御指針を示す. 実用材料としての可能性の検討として,口腔環境下における腐食が機械的性質に与える影響についても調査する.人工唾液中における酸化物被覆 Ti 合金ならびに Ti 合金の摩擦 摩耗試験を行う.この際,電気化学測定を同時に行い,材料のトライボコロージョン(腐食摩耗)挙動 に関する情報を得る.腐食挙動については溶出イオン濃度分析や pH 変化などで評価する.生物学的評価は,ドイツの大学と国際共同研究を検討中である.可能であれば共同研究先とのサーマルショック試験による耐熱衝撃性の評価も検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった高額備品や装置使用料に関し,幸いにも他に採択された助成金等で賄うことが出来たため,次年度使用額が発生した.次年度計画としては,最終年度であることから研究成果発表や論文投稿により重点的に使用する予定である.
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