研究課題/領域番号 |
16K06778
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
菊田 貴恒 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20599055)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 繊維の複合混入 / 引張強度 / 繊維補強セメント系複合材料 / 一軸引張試験 / 超高強度 / ナノ繊維 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来のコンクリート構造よりも大きな地震荷重等に対して安全で、尚且つライフサイクルが長い新しい長寿命型構造架構を実現するため、引張強度で25MPa以上の超高強度と引張終局ひずみで2%以上の高靭性を併せ持つ画期的な「超高強度ひずみ硬化型セメント系複合材料」の開発である。 本年度は主に物性の異なる繊維を適切にハイブリッド化するマルチファイバーテクノロジーについて検討し、結果として一軸引張強度23MPaという目標値に近い超高強度を実現しうる材料設計手法を見出した。具体的にはセメント系材料に発生する各ひび割れのレベルに応じた適切なひび割れ補強繊維を混入するという材料設計手法であり、マクロレベルのひび割れを補強する金属繊維、メゾレベルのひび割れを補強する短い金属繊維、ミクロレベルもしくはナノレベルのひび割れを補強するミクロ(ナノ)繊維という3種類の繊維を適切に組み合わせることで、上記の超高強度が実現可能であることが確認された。特に非常に高い引張強度を実現にあたり重要となるのが、ミクロ(ナノ)繊維の存在であることが明らかとなり、セメント系材料のひび割れ先端部に発生する破壊進行領域を適切に繊維架橋できる非常に小さなミクロ(ナノ)繊維を混入することが、長い金属繊維等を多量に混入するよりもひび割れ架橋特性により効果的であることが明らかとなった。なお、今年度の研究ではミクロ(ナノ)繊維としてカーボンナノチューブやセルロースナノファイバー、粉体状の化学合成繊維の混入が引張強度を著しく向上させる効果があることが明らかとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目の本年度の研究において、セメント系材料の引張強度として目標設定した強度レベルにほぼ近い数値を出すことが出来ており、材料の設計手法の確立という観点では非常に順調に研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は引張強度の目標値である25MPa以上を安定的にクリアできる超高強度材料の材料設計についてさらに検討を進めると共に、その強度レベルを保ちながらさらに高靭性なひび割れ破壊特性を示すことが可能な調合設計について検討を進める予定である。また、従来、この手の材料の評価に使用されてきた薄板のダンベル型試験体よりも、より大きな断面を有する試験体を使用する大断面試験体による評価方法を確立できるように、試験方法について検討を進める予定である。また、この大断面試験体による試験結果と従来のダンベル型試験体による試験結果を比較し、超高強度繊維補強セメント系複合材料の寸法効果を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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