引張強度25MPa以上の高強度と引張終局ひずみ2%以上の高靭性を併せ持つ、超高強度ひずみ硬化型セメント系複合材料の実現を目標に、これら材料を実現する材料設計に関する各種の検討を実施した。最終年度はカーボンナノチューブ繊維等のナノ繊維および繊維長さ0.1~0.8mm程度の極短繊維とその他繊維との複合混入効果について調合設計的検討を実施した。 カーボンナノチューブ繊維の混入効果を明らかにするため、長さ6mmの高強度ポリエチレン繊維とカーボンナノチューブ繊維を複合混入し曲げ試験を実施したところ、カーボンナノチューブ繊維の混入率の増加に応じて最大強度が上昇し、軟化挙動の勾配が穏やかに変化することが明らかとなった。したがって、ナノレベルの繊維であってもひび割れ界面における繊維架橋力に影響を及ぼすことが証明された。 また、これまでセメント系材料にあまり使用されていなかった繊維長さ0.1~0.8mm程度の極短繊維の複合混入効果を明らかにするため、長さ6mmの高強度ポリエチレン繊維と繊維長さ0.1~0.8mm程度の極短繊維を複合混入し曲げ試験を実施したところ、繊維長さ0.1~0.8mmと極短繊維であるのにも関わらず、その繊維混入率の増加に伴って最大強度が上昇し、初期ひび割れ以降の不安定な荷重低下が抑制されることが明らかとなった。また、極短繊維混入率を増加させることで、初期ひび割れ以降の不安定な完全になくなり、初期ひび割れ直後から硬化挙動を発現することが確認された。したがって、繊維長さ0.1~0.8mm程度の極短繊維であっても材料の高強度化に十分に寄与することが明らかとなった。 これらの知見を総合し、2種類の金属繊維と0.5mmの極短繊維を複合混入することで、引張最大強度22MPa、引張終局ひずみ2.1%という性能を実現できることを明らかとした。
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