研究課題/領域番号 |
16K06781
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
吉田 健一 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (60252201)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グリーンシート / 大面積化 / 反り抑制 / 集電 / 空気極 / 固体酸化物燃料電池 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、Ni+YSZグリーンシートの改良に取り組んだ。その結果、まず10㎝角のNi+YSZグリーンシートを、安定的に作成する技術を確立した。具体的には、原材料粉末と各種溶剤の配合比を最適化すること、グリーンシートの膜厚を調整することで、シート作製の最適条件を見出した。なお、このグリーンシートは、昨年度まではドクターブレード法で作製していたが、鋳込み成型の方が、膜厚が均一で大面積(10㎝角)のシート作成が容易となったことから、鋳込み成型法を採用して研究に取り組んだ。次にこのグリーンシートの乾燥条件を最適化することで、従来よりもシートの反りを抑制することに成功した。具体的には、シートが反る温度領域が、100℃以下の低温領域、300℃以下の中温域、1000℃以上の高温域の3つに分かれていることを見出し、それぞれの温度域でシートが湾曲しないための対策を施し、従来よりも反りの少ない平板基板の作製に成功した。 次にこのNi+YSZのグリーンシートを支持基板とした、Ni+YSZ/YSZ/GDC/LSCF+GDC/LSCFの電池構成となる、既存物質を用いた固体酸化物燃料電池の高出力化に取り組んだ。その結果、800℃の水素-酸素雰囲気で、0.8W/cm2の出力密度を達成した。実はこれまでも、同等性能の電池作製には成功していたが、集電のために触媒活性のある銀ペーストを用いなければならなかった。したがって従来の方法では、空気極の触媒活性などの性能を、厳密に評価することができなかった。今回、触媒活性のない金を集電に使用する方法を見出し、空気極の性能を正確に評価できるようになった。 今後はこの電池を用いて、空気極物質の性能評価を行い、新物質発見を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
空気極の新物質探索に不可欠となる、既存物質を用いた燃料極+電解質の一体型基板の作製に成功したが、これらの要素技術の開発に予想以上の時間が掛かった。したがって従来計画では、今年度から新物質探索を開始する予定だったが、実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
開発した基板を用いて、層状酸化物をターゲットとした空気極の新物質探索を行う。 一方、開発した既存物質の電池出力は、800℃で1W/cm2という目標値を下回ったため、既存物質を用いた高出力電池の開発も、新物質探索と並行して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画で必要となっていた、GDC反応防止層を作製するためのスピンコーターは、自作することで購入費を浮かせることができた。次に、グリーンシートを作製するために購入を検討していた、ドクターブレード成膜装置も、安価な鋳込み成型で基板作成が可能となったため、不要となった。このように当初予定した大型物品の購入を、既存設備の改良などで補ったため、経費を大幅に削減することができた。一方、作製した電池の出力が、800℃で1W/cm2以上という目標に届かなかったため、既存物質を用いた高出力電池の作製が課題として残っている。このために必要となるレーザー蒸着装置は、現在所有している。しかしながら、レーザーの本格稼働には、波長変換結晶など、合計で100万円以上の高額な交換部品が必要となる。したがって次年度以降は、これまで繰り越した研究費を、レーザー関連部品の購入費に充てる予定である。
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