研究課題/領域番号 |
16K06784
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
井川 直樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究主幹 (60354833)
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研究分担者 |
樹神 克明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究主幹 (10313115)
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50354832)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 局所乱れ / 燃料電池材料 / 中性子回折 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
水素伝導型燃料電池材料用の固体電解質であるBaSn0.5In0.5O2.75、La2Ce2O7およびLa0.3Ce0.7O1.85について合成実験を進め、引き続き、合成して得られた電池材料中へ水素導入実験を進めた。さらに、水素導入前後のこれら材料に対して中性子回折実験を実施した。得られた中性子回折データを用いてリートベルト法による平均構造解析を行った結果、、La2Ce2O7およびLa0.3Ce0.7O1.85材料では、水素導入前、導入後のいずれの材料も蛍石型(Fm-3m)の平均結晶構造を有することが分かった。水素導入後の材料の格子定数は導入前のそれよりも大きくなるものの、中性子散乱長分布には、水素の存在を示唆する高密度領域は観察することができなかった。一方、BaSn0.5In0.5O2.75固体電解質材料では、水素導入前、導入後のいずれの材料もペロブスカイト型(Pm-3m)の平均結晶構造を有することが分かった。BaSn0.5In0.5O2.75中への水素の導入量は、試料1モル当たり0.155(6)モル-Hと求めることができ、水素の導入により0.95%の格子定数の増加が認められた。また、SnとInは同一結晶サイトを占有するが、水素の存在の有無にかかわらず、SnとInが規則正しく配列するオーダリング構造はとらず、ランダムに配列することが分かった。さらに、水素を導入することで、各原子の熱振動因子の大幅な増加が観察された。このことから、水素が導入されることで局所的な構造の乱れが発生していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子回折実験に重要である良質な単一相試料の合成および試料中への水素導入に成功し、中性子回折実験・平均結晶構造解析を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までに得られた平均結晶構造を基に、パルス型中性子回折実験・局所構造解析を実施し、水素導入によって生じる局所構造変化を解析することで、電池材料中のイオン拡散と局所乱れの相関を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平均結晶構造を解析するための中性子回折実験のために利用する研究用原子炉JRR-3の再稼働が予定より遅れているため、当該実験を他の施設にて実施することとしたが、実験に使用する試料や冶具等の購入費に差が生じたたため。JRR-3が再稼働した場合は、本施設による実験のための消耗品の購入に使用する。JRR-3の再稼働が遅れた場合は代替施設での実験のための消耗品の購入に使用する。
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