研究課題/領域番号 |
16K06785
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
長谷川 伸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (60354940)
|
研究分担者 |
廣木 章博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (10370462)
前川 康成 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 部長(定常) (30354939)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ガス選択透過 / 放射線グラフト重合 |
研究実績の概要 |
多孔性高分子基材膜に分子鎖長を制御した高分子鎖を導入することで、細孔径をナノサイズで制御するとともに、ガス分子とグラフト鎖の相互作用効果を利用することにより、水素ガスを選択透過する機能性膜の開発を目指す。今年度は、イオン照射による核飛跡を利用したグラフト膜の開発を進めた。基材膜には、酸素、水蒸気の遮断性が高い25μm厚のポリ塩化ビニリデンを用いた。モノマーは、水素を選択的に透過するケイ素を含んだグラフト用モノマーである、トリメチルシリルスチレン(TMSS)を用いた。量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所のイオン照射施設TIARAを利用し、310MeV 84Kr20+ を照射した。1×10^10 ions/cm2照射した試料へのTMSSのグラフト重合では、24時間でグラフト率12%に達し、核飛跡に残存するラジカルを利用したグラフト重合に成功した。 差圧法を利用したガス透過試験において、未照射膜の膜の水素ガス透過度は、1.5×10^-12 mol/sec・m2・Paと低い値を示したが、1×10^10 ions/cm2照射した試料は7.7×10^-8 mol/sec・m^2・Paとガスの透過性を示した。しかしながら、酸素に対する水素の透過性比(H2/O2)は、未照射、照射試料双方ともそれぞれ1.1、1.3倍と選択透過性を示さなかった。一方、イオン照射した膜にTMSSを12%グラフトした膜では、水素の透過度が6.4×10^-8 mol/sec・m^2・Paに低下するし、酸素に対する選択透過性(H2/O2=6.0)を示したことから、核飛跡に導入したTMSSグラフト鎖が水素ガスの選択透過に有効に機能したことを実証できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、29年度以降の計画として、『リビンググラフト重合膜を用いたガス選択透過性の検討とイオン穿孔膜を用いた検討』としていた。昨年度の検討で、イオン照射した膜の核飛跡を利用し、選択的にグラフト重合反応が進行すること、ガス透過比において酸素に対して水素が6倍選択的に透過したことを見出し、昨年度の目的を達成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
イオン照射した基材膜のグラフト重合による核飛跡への選択的なグラフト鎖導入において、シリカ含有のビニルモノマーの化学構造、導入量やグラフト鎖長を検討することで、水素の選択透過に対して最適なグラフト膜の構造を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)使用する化学試薬の使用量が、見積もった量より少なくてすんだため。 (使用計画)膜の合成ため、薬品の購入を行う。
|