研究課題/領域番号 |
16K06786
|
研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
橋本 雅美 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 上級研究員 (20450851)
|
研究分担者 |
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50292222)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 酸化チタン / 表面電荷 / 水酸化アパタイト / 骨芽細胞 / 分化 / 親水性 / チタン |
研究実績の概要 |
純チタンをPO2=10-14Paの低酸素分圧下で熱処理した表面の水酸化アパタイト(HAp)被覆率は、873および973 Kとも1または2 h熱処理した場合に最も大きく、熱処理時間の増加に伴い減少し、873 Kの場合には20 h以上の熱処理で全くHApは形成しなかった。また表面電位の極性は、熱処理温度に依存し、873 Kで熱処理した場合は負に、973 Kで熱処理した場合は正に帯電しており、熱処理時間の増加とともに、何れの熱処理温度の場合もゼロに近づく傾向を示した。正の表面電位極性の方が負の場合よりもHAp形成能が大であることがわかった。 擬似体液(SBF)浸漬初期の飛行時間型ToF-SIMS解析の結果より、正および負の極性を有する何れの表面でも、リン酸イオンが優先的に吸着していたが、特に、正の極性を有する表面の方がリン酸イオンの吸着量が大きかった。以上より、熱処理条件を変化させることで、スケールの表面極性を任意に制御できることがわかった。また、これらのスケール表面には、反対の極性を有するイオンの優先的な吸着が促進され、その結果として、その後のHAp核の形成と成長が促進されたと考えられた。 一方、MC3T3-E1間葉系細胞を用いた骨芽細胞への分化能に関しては、正および負の表面極性を持つ場合も、未処理のチタンと比べて約1.5倍の高い能力を有していた。よって、“正または負の表面電位極性を有する窒素含有欠陥型酸化チタンスケール”は、HAp形成能のみならず、骨芽細胞活性も大であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、大きく分けて以下の2つを目標とした。 1.表面電荷(正、負、ゼロ)の異なる酸化チタンスケールを作製 純チタンを低酸素分圧下の窒素中で熱処理すると、熱処理温度、保持時間を制御することによって、表面電荷を任意に制御出来ることを明らかにした。(達成度100%) 2.表面電荷の異なる純チタン上での骨芽細胞活性評価 上記表面電荷の異なる酸化チタンスケール上でのMC3T3-E1細胞の増殖および分化能の評価を行い、正または負の電荷を有する表面では、分化能が未処置Tiに比べて1.5倍であることがわかった(培養日数14日)。(達成度80%)
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、低酸素分圧下で純チタンの酸窒化処理をする際の熱処理温度および時間を制御することによって、表面電荷を任意に制御出来ることを明らかにした。 平成29年度は、表面電荷の異なる酸化チタンスケール上での吸着タンパク質の種類および構造の評価を金コロイド二次抗体等を用いて行い、表面電荷の影響を調べる。さらに、培養日数14日以上の骨芽細胞活性評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に行った細胞評価に関して、表面電荷の異なる酸化チタンスケール上での長期培養日数の評価が不十分であり、そのため計画通りに研究が進まず約20万円の次年度使用額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、表面電荷の異なる超親水性を発現した酸化チタンスケールを作製し、(1)吸着タンパク質の種類および構造の評価を金コロイド標識二次抗体等で行い、表面電荷の影響を調べる。消耗品費で試薬、装置用部品等を計上し、表面分析費をその他の細目で計上した。(担当:JFCC橋本) (2)骨芽細胞活性を評価し、細胞毒性、細胞増殖、骨芽細胞分化に与える表面電荷の影響を評価する。(担当:東北大学金高) 最新の成果動向の調査や成果報告のための学会発表を旅費の細目で計上し、学会参加費をその他の細目で計上した。
|