研究課題/領域番号 |
16K06789
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
八代 仁 岩手大学, 理工学部, 教授 (60174497)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / セパレータ / ステンレス鋼 / 窒化 |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池(PEFC)用セパレータ材料として安価で加工性に富むステンレス鋼が注目されている。本研究では結晶粒径の異なる、介在物低減化処理を施したSUS316Lステンレス鋼に対し、定電流法による電気化学的窒化を行い、それが接触抵抗や耐食性に及ぼす影響を検討するとともにPEFC用セパレータとしての特性を評価した。 介在物低減化SUS316Lステンレス鋼(通常材)及びその結晶粒微細化処理材(微細化材)を、0.1 M HNO3+0.5 M KNO3溶液中に浸し、対極に白金板を用い1時間定電流(-10 mA cm-2)を印加した。試験片-GDL間の接触抵抗を接触圧の関数として測定するとともに、模擬PEFC環境中における分極試験により耐食性を評価した。また、窒化処理した微細化材をセパレータとする単セルを組み、発電特性を評価した。 通常材と微細化材に対し、1 h電気化学的窒化を行った結果、150 N cm-2における接触抵抗の変化は通常材で56.6→15.4 mΩ cm2に対し、微細化材で65.0→6.8 mΩ cm2と、微細化材でより効果的に低下した。また、窒化処理した試験片を模擬PEFC環境中(0.6 V vs. SCE)で1 h分極した結果、通常材の接触抵抗は173 mΩ cm2に増加したのに対し、微細化材は26.9 mΩ cm2と低い値を維持した。動電位分極試験の結果、窒化処理による耐食性の低下は見られなかった。窒化処理を施した微細化材についてXPS解析を行った結果、396.8 eV付近に窒化物のピークが認められ、模擬PEFC環境中(0.6 V vs. SCE)で1 h分極しても消失しなかった。電気化学的窒化した微細化材をセパレータとする単セルのi-V特性を評価した結果、未処理の通常材と比べてセル電圧の向上が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の目標は電気化学的窒化挙動に及ぼすステンレス鋼の結晶粒径の影響を明らかにすることであり、微細化によって電気化学的窒化がより有効に進行することが実証できた。また実際にセパレータを試作して発電特性を調べ、微細化が有効であることを実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見に基づいて、ステンレス鋼の電気化学的窒化によるナノ窒化物層導入プロセスを最適化し、長時間の発電試験によりセパレータ性能の安定性を実証する。
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