研究課題/領域番号 |
16K06792
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
宮野 泰征 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (60466589)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 微生物腐食 / 付着 / ステンレス鋼 / 溶接 / 粒界 / 析出 / 偏析 / COCRM |
研究実績の概要 |
微生物腐食誘導の可能性が指摘される金属学的因子を材料工学的手法により制御/導入した試料を作製し、それらに誘導される微生物腐食発生挙動を、COCRMで可視化ための研究を行った。作製試料を対象とした微生物腐食再現の加速条件を導出した。金属学的因子と微生物応答の相関を評価し、腐食再現加速条件下で、微生物腐食進行過程の可視化データを取得した。 (1)金属学的因子を制御/導入した金属試料の作製:ステンレス鋼、炭素鋼、銅合金などの微生物腐食に関連性の高い材料を対象に、一般的な材料工学的手法(熱処理、塑性加工など)のほか、先端材料加工プロセス(摩擦攪拌プロセス、ファイバーレーザなど)の適用も検討し、微生物腐食との相関が指摘される金属学的諸因子(粒界、析出、偏析、応力などの分布)を制御/導入した試料を作製した。作製試料については、金属学的解析手法により、金属学的因子の定量値、分布情報等を明らかにした。 (2)微生物腐食再現の加速条件の導出、金属学的因子と微生物応答の系統的評価:作製試料を対象に微生物腐食再現の加速条件を、COCRM、金属学的特性評価、および電気化学的検討から導出した。供試微生物については、保有する原因微生物以外に、最新の腐食事例環境からも微生物腐食再現の加速に有効な菌株/金属学的因子への応答性に優れる菌株を探索し、必要に応じ種族特定/生体特性を解明する。以上より、金属学的因子に対する微生物付着応答/微生物腐食誘導について系統的な評価を行った。 (3)金属/微生物その場同時観察による微生物腐食進行過程の可視化:COCRMを利用した定点連続観察を実行し、微生物腐食進行過程の可視化を目指した検討を行った。①金属表面への微生物の着床、②バイオフィルム形成、③腐食発生という微生物腐食進行過程の可視化を実現し、微生物腐食を誘導する金属学的諸因子の影響を解明するための知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属学的因子を制御/導入した金属試料の作製については,申請者の専門分野である溶接関連の設備,材料(ステンレス鋼、炭素鋼、銅合金など)を利用し研究の立上げを速やかに行うことができた。先端材料加工プロセス(摩擦攪拌プロセス、ファイバーレーザなど)の適用についても,連携研究者の協力を得ながら順調に実験を進めることができた.微生物腐食との相関が指摘される金属学的諸因子(粒界、析出、偏析、応力などの分布)の解析については,申請者所属機関が保有する装置(FE-SEM/EBSP、EDX、XRD等)を活用し計画的に実験を行うことができた. 微生物腐食再現の加速条件の導出に向けた成果の一つとして,研究連携者の活躍により腐食再現に有用な微生物を、環境から探索し、種族特定/生体特性を検討することができた。この微生物を使用して、金属学的因子に対する微生物付着応答/微生物腐食誘導について系統的な評価をことができた。 上記検討で探索した微生物を対象に、COCRMを利用した定点連続観察を実行し、微生物腐食進行過程の可視化を目指した検討を推進している.観察視野に十分な微生物の着手がおこらない等、微生物の生育条件の導出に予定より多くの時間を費やした。しかし、現在ではいくつかの条件を克服し、腐食再現を効率化できる可能性を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
金属学的因子と微生物応答の相関の高精度/実時間解析に向けた検討を推進する。微生物腐食の進行過程の可視化情報と、電気化学的解析データの相関を評価し、腐食現象の理論的解析を目指す。また、材料学的ミクロ観察手法により、腐食形態/速度(孔食深度)の実態・傾向を明らかにする。上記検討から、微生物腐食を誘導する金属学的因子の影響を解明する。 (1)金属学的因子と微生物応答の相関の高精度/実時間解析:金属表面の微生物観察は、染色操作や固定化処理に依存することが一般的で、このことは微生物応答の実態解明の大きな制約の一つである。一方、COCRMはこの制約の解消が可能な技術であるが、金属最表面の微生物単体の運動の観察は金属光沢によりやや制限を受ける。そこで、本申請研究では、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子で形質転換した微生物をトレーサーとして活用する実験手法を考案し、金属学的因子と微生物応答を定量的/速度論的に解析した、国際的にも新規な知見の獲得を目指す。 (2)腐食発生挙動の可視化情報と電気化学的特性の相関解明:微生物腐食再現試験中の可視化情報と試料電気化学特性をin-situで評価可能な実験系を設計/考案する。金属腐食/微生物の位置情報と表面電位分布(SVET:走査振動電極法などを想定)などの電位可視化情報との関連付けにも取組み、腐食発生挙動の理論的な解析を試みる。 (3) 微生物腐食を誘導する金属学的因子の影響解明:腐食再現後の試料表面の微視的形態/金属組織を、ex-situで評価/解析(SEM、超深度形状測定装置、AFM等)し、腐食形態/速度(孔食深度)の実態を明らかにする。前述した、腐食発生挙動の可視化情報、電気化学的特性と本検討結果を総合的に評価し、微生物腐食を誘導する金属学的因子の影響を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高額の装置(解析装置)については,現在画像取得に利用している顕微鏡器材の更新が予定されることになったので,当該年度での購入を見送った. 今年度以降については,研究の進捗状況や連携機関との相談しながら,対応を行う予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
購入を検討中の機材の購入資金に追加を予定している。
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