研究実績の概要 |
線幅30nm以下の超微細Cu配線の信頼性を向上させることは、ULSIの性能向上に必須の課題となっている。そのためにはCu配線の抵抗率を下げ、かつエレクトロマイグレーション耐性を上げることが必要であり、それはCu配線を構成するCu多結晶粒を一様に粗大化することで実現できる。ところが、LSI中の極微細配線という制限のために、そのプロセス開発は未だに成功していない。本研究グループでは、Cu配線のめっきプロセスにおける電解液・アノード純度を上げ、かつ添加剤の量を極小化することにより、大幅な粒径向上を実現した。これは銅極細配線における粒成長を阻害する不純物のピン止め効果がきわめて重要であることを示している。 昨年度の研究では、フェーズフィールド法による計算機実験を行い、この不純物効果を再現することに成功した。本年度は、これらの研究成果を国際会議において発表するとともに学術雑誌に掲載した。さらに、昨年度の計算モデルを改良して一様に応力を加えた影響の解析を可能とし、外部から一様応力を印加することによって、さらなる粒径増大が実現できるのかをシミュレートして検討した。 計算の結果、ピン止め不純物が粒界領域に占める割合が0, 1, 5, 25, 50, 75, 100%のすべての場合に対して、一様応力を印加したことによって、最終粒径が応力を印加しなかった場合よりも増大することを確認した。特に不純物濃度が50%以上と高い場合、増大の度合いは20~30%に達した。以上の結果は、配線を電気めっきで作成後にアニールする際に一様応力を印加することで、さらなる粒径増大を可能とすることを示している。
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