研究課題/領域番号 |
16K06799
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
筧 幸次 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70185726)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Ni基超合金 / 積層造形 / ひずみ時効割れ / 柱状晶 / 再結晶 |
研究実績の概要 |
タービン翼にはγ’相体積率が高い柱状晶/単結晶鋳造合金,航空機用タービンディスクにはγ”相を強化相とする多結晶鍛造合金IN718(インコネル718)が用いられている.IN718 のレーザ積層材は,従来の溶解鍛造材に比べ高温強度特性が劣る.これは主として積層材が混粒結晶組織となることが主要因と考えられるため,積層超合金の柱状晶/単結晶造形を試みた.供試材はARCAM A2XおよびEOSM280で造形されたNi基合金IN 718を用いた.溶解鍛造材では,一般に溶体化熱処理 982 ℃/1 h (空冷)の後,時効処理として718℃/8 h (炉冷)+621℃/10 h (空冷)を施す.本研究では,積層造形後熱処理を施していないものをas-built材,前述の溶体化及び時効熱処理を施したものをSTA (Solution Treated and Aged) 材,直接時効熱処理のみ施したものをDA (Direct Aged) 材とした.引張試験は650℃で行い,クリープ試験は550 MPa/650℃で行った. 【結果】電子ビーム積層造形法のas-built材において垂直面で,一方向凝固材に似た積層方向に細長く伸びる柱状結晶粒が観察された.電子ビーム積層造形材では,レーザ積層造形材で観察されるようなMPBs (Molten Pool Boundaries) やデンドライト組織は観察されなかった.両造形法の積層まま材では,微細なNb化合物が観察された.また,電子ビーム積層造形のDA材,STA材では,複数の相が合体した析出物が観察された.STA材,DA材において,電子ビーム積層造形材の方がレーザ積層造形材に比べクリープ寿命と延性が優れていた.電子ビーム積層造形材では,デンドライト組織は生成せず,柱状晶組織が発達したためと考えられる.特に,電子ビーム積層造形のDA材で優れたクリープ寿命を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IN718合金において,電子ビーム積層造形法による造形まま材において垂直面で,一方向凝固材に似た積層方向に細長く伸びる柱状結晶粒が観察された.電子ビーム積層造形材では,レーザ積層造形材で観察されるようなMPBs (Molten Pool Boundaries) やデンドライト組織は観察されなかった.両造形法の積層まま材では,微細なNb化合物が観察された.また,電子ビーム積層造形のDA材,STA材では,複数の相が合体した析出物が観察された.STA材,DA材において,電子ビーム積層造形材の方が,柱状晶組織とデンドライト組織が発達しないため,レーザ積層造形材に比べクリープ寿命が優れていた.特に,電子ビーム積層造形のDA材で優れたクリープ寿命を示し,積層造形のアキレス腱であった高温クリープ特性を改善することができた.また,γ’析出強化合金IN939において,溶体化中に,造形中に導入されたひずみにより再結晶が生じることを見出した.
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今後の研究の推進方策 |
γ’析出強化合金IN939において,溶体化中に,造形中に導入されたひずみにより,溶体化熱処理およびクリープ変形中に再結晶が生じることを見出した.溶体化処理を最適化することによろ,結晶粒が等軸微細化化する可能性が高い.そこで,共晶γ-γ’粒子および粒界上γ’相による結晶粒成長抑制効果を利用して,熱処理割れの原因となる母相中の微細析出相再固溶と残留応力除去とを同時に行う未再結晶溶体化条件を見いだす.処理後,規定された760℃/16h の時効熱処理を施し,クリープ試験等の高温強度試験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた積層造形費用が企業との共同研究となり,費用負担が軽減された.
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し金は,積層造形用費用に充てる.
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