研究課題/領域番号 |
16K06804
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
富澤 淳 沖縄工業高等専門学校, 機械システム工学科, 教授 (10744980)
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研究分担者 |
末吉 敏恭 琉球大学, 工学部, 准教授 (10264475)
政木 清孝 沖縄工業高等専門学校, 機械システム工学科, 准教授 (30323885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | せん断曲げ / 曲げ / 焼入れ / 熱間曲げ / 3次元曲げ / 3DQ |
研究実績の概要 |
せん断モード3DQ(3次元熱間曲げ焼入れ)の初等解析モデルを開発し、各種加工条件と荷重特性の影響を明確化した。これらの結果に基づき、現状の装置での加工可能な試験条件を選定し、小径薄肉鋼管を用いた予備試験を実施した。その結果、現状の装置を用いて、新たなせん断モード3DQでの加工を行えば、狙い通り曲げ半径の小さな曲げ半径でしわが発生しないことを確認できた。 一方、新たなせん断モード3DQの比較対象である従来の曲げモード3DQについて、丸管におけるしわ発生限界および断面の扁平について、広範囲の鋼管の寸法(外径、板厚)、変形幅(インダクションヒータの加熱幅に対応)の関係を実験的に求め、また初等解析から得られたパラメータを参考にして、定量化した。これらの成果は、2017年度春の塑性加工学会で、発表予定である。 今回の予備試験(外径25.4mm、板厚1.2mm)の条件では、従来の曲げモード3DQでのしわ発生曲げ半径限界に比較して、約4分の1の小さな曲げ半径まで成形可能であった。また、加工荷重は初等解析モデルで予測した値と概略一致したが、片持ちのロボットを採用している試験装置の弾性変形により、理想的な塑性変形が得られていないことが判明した。今後の本格的試験装置の設計に活かす貴重なデータと知見が得られた。 現行の装置で、せん断モード3DQの試験が可能であることが判明したため、当初の解析主体の計画から、より実験を主体とした研究を推進していく予定である。 なお、せん断モード3DQのFEM解析モデルについては、従来の厳密モデルに計算時間を要するため、より簡易的で計算速度の速いモデルの開発に着手し、進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回開発するせん断モード3DQの目的は、鋼管の1470MPa以上の高強度な閉断面製品が製造可能な3次元熱間曲げ(以下曲げモード3DQ)技術の成形可能範囲の拡大である。従来の曲げモード3DQにおける丸管のしわ発生限界および断面の扁平について、広範囲の鋼管の寸法(外径、板厚)、変形幅(インダクションヒータの加熱幅に対応)の関係を実験的に求め、また初等解析から得られたパラメータを参考にして、定量化した。これらの成果は、2017年度春の塑性加工学会で、発表予定である。 せん断モード3DQの開発では、加工荷重を予測する解析モデルが必要となる。今回初等解析モデルを開発し、その妥当性を確認するとともに、各種加工条件と加工荷重特性、装置に作用する荷重やモーメントを明確化した。 これらの結果に基づき、予定より早く、現状の装置での加工可能な試験条件を選定し、小径薄肉鋼管(外径25.4mm、板厚1.2mm)を用いた予備試験を実施した。その結果、従来の曲げモード3DQでのしわ発生曲げ半径限界に比較して、約4分の1の小さな曲げ半径までしわ無しに成形可能であった。現状の装置を用いて、新たなせん断モード3DQでの加工を行えば、狙い通り曲げ半径の小さな曲げ半径での良好な成形が可能で、加工可能範囲を大幅に拡大できる可能性を確認できた。 ただし、せん断荷重の最大値については、初等解析モデルの予測値と概略一致する結果が得られたが、荷重の立ち上がりの遅れが観察された。その原因として、支持ガイドとロボットの弾性変形の影響が考えられたが、原因究明試験より支持ガイドの剛性不足ではないことが明らかになった。今回の試験により、本格的試験装置の設計に活かすための貴重なデータと知見が得られた。 なお、せん断モード3DQのより簡易的なFEM解析モデルをについては、やや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
現行の装置においても、小径薄肉鋼管を用いることによって、せん断モード3DQの試験が可能であることが判明した。したがって、当初の解析主体の計画から、より実験主体の研究を推進してゆきたい。今後、実際の実験で、せん断モード3DQによって得られる製品の材料特性、変形特性と試験条件(送り速度、加熱幅など)の関係を明確化してゆく予定である。特に、今回の小R曲げにおいては、加熱後にジャケットから噴射される冷却水によって、周方向の均一冷却が達成できるかが、実用化のポイントの一つであると予想される。その観点でも試験を進め、製造可能範囲を見極めていく。 今回開発した初等解析モデルでは、試験装置の各部位(先端の鋼管固定端、支持ガイド、材料送り部)に作用する荷重やモーメントが算出可能である。今回の予備試験で、せん断荷重の値の妥当性も検証された。また、試験装置の弾性変形の抑制がポイントであるとの知見も得られた。本モデルを活用して、本格的試験装置の設計を進めていく予定である。 また、より簡易的で計算に時間を短縮したFEM解析モデルの開発については、変形様態の考察や最適条件の検討など必要であるため、完成度をアップさせていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打合せや実験打合せなどを効率化と安価な航空券の購入などを心がけたため、旅費が大幅に低く抑制された。一方、実験が順調に進んだため物品費は、予想より大きくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度合算して使用する予定である。実験とその測定・評価に不可欠な物品を前倒しで購入し本研究を推進する。
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