研究課題/領域番号 |
16K06806
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清水 禎樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (20371049)
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研究分担者 |
中野 禅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (50357646)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマプロセス / CVD / PVD / 切削工具 / 寿命改善 / 耐摩耗性薄膜 / 潤滑性薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究開発は、切削工具の長寿命化に向けて、その表面に耐摩耗性や潤滑性に優れた膜を簡易的に成膜するための技術開発を目的としており、主に①成膜プロセスに関する基礎的研究、②該成膜を簡易的に施すための卓上型プラズマ成膜装置の開発、を行うものである。以下、ぞれぞれの本年度実績を記す。
①成膜手法に関する基礎的研究: 耐摩耗性膜には金属炭化物・窒化物が賞用されるケースが多い。これら材料のプラズマCVDによる成膜では、膜原料となるガスについて、炭素源および窒素源に用いるガスは種類も豊富で比較的容易に扱える一方で、金属源についてはガス種も限られ、その取り扱いも特殊な装置を要するケースが多い。装置およびプロセスを含めたトータルでの成膜簡易性を追求する本研究開発では、原料の扱いについても簡易性を追求し、金属元素を含む液体試薬をミスト化し、プラズマ中に供給・分解・反応させ、被成膜体に金属成分を選択的に堆積させる簡易手法を検討した。昨年度に開発したプロトタイプの成膜装置を利用し、被成膜体への連続膜成膜を確認した。膜組成の分析では、試薬に由来すると思われる酸素の含有が確認された。酸素含有量低減に向けて、アルゴンプラズマ中への微量水素ガス導入による原料分解・反応過程での還元を試みたが、酸素含有量に大きな変化は見られなかった。以上の結果から、金属成分の堆積については成膜原理の見直しを図り、被成膜体近傍に金属材料のターゲットを設置し、アルゴンプラズマでスパッタする方法についても検討した。本手法でも被成膜体への連続膜成膜を確認した。膜の組成分析では、前者の方法と比較して酸素含有量の大幅な減少が確認された。
②該成膜を簡易的に施すための卓上型プラズマ成膜装置の開発: 昨年度開発したCVD用のプロトタイプ装置に、上記①のような金属ターゲットを設置するためのジグを新たに設置し、スパッタプロセスが可能な仕様とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、昨年度開発した装置を用いて、実際のドリル表面への成膜と評価に関する研究までを行う計画であったが、膜組成の制御を含め、成膜全般の最適条件の模索、成膜原料および成膜原理の最適化に注力したことから、本年度は本研究における成膜プロセス技術の基盤的要素開発までとなった。しかしながら、このような今年度の開発で、耐摩耗性膜として有用な金属炭化物や窒化物成膜のための基盤技術が整ったため、最終年度となる次年度は加速的な研究開発の推進が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度に開発した成膜基盤技術を活かし、代表的な切削工具であるドリル表面への成膜試験を実施する予定である。当初予定していたCVDに加えて、スパッタ(PVD)法も合わせて成膜プロセスに取り込み、実際のドリル表面への金属炭化物や窒化物の成膜を行う。膜の評価では、膜の密着強度ならびに耐摩耗性を中心に評価し、実際の成膜ドリルを用いた穴あけ加工による膜の耐久性評価も実施する計画である。最終的には、本研究での成果を、将来的な装置設計ならびにプロセス設計へとすみやかに繋げるために、成膜条件、膜特性、成膜速度などについて整理し、データベース化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度は、本研究開発の軸となる成膜技術の基盤技術開発に注力し、成膜技術の実用化検証で用いる切削工具の購入や、その評価結果ならびにデータ整理を行う技術補助員雇用のための人件費が未使用となった。また昨年度に開発したプロトタイプ成膜装置の設計思想を活かした2号機を開発予定であったが、成膜試験の進捗状況と合わせて1号機の改造にとどまったことから、本年度中の2号機開発を翌年度に見送った。以上の理由から未使用額が発生した。 上記の理由で発生した昨年度末時点での未使用額については、30年度予算と合わせて、本年度加速的に本研究を実施するために雇用する人件費、改良型成膜装置、作製した膜の依頼分析、また、年度後半に予定している国内および国際学会への参加費・旅費で使用する予定である。
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