研究課題/領域番号 |
16K06807
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
栗林 一彦 千葉工業大学, 附属研究所, 客員研究員 (70092195)
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研究分担者 |
小澤 俊平 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (80404937)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 準安定相 / 希土類元素/鉄酸化物 / 浮遊溶融凝固法 / tolerance factor |
研究実績の概要 |
準安定六方LnFeO3 (h-LnFeO3, Ln:希土類元素) は強誘電性と反強磁性を併せ持つmulti-ferroic物質として注目されている.この物質を得る手段としては無容器浮遊法による過冷融液からの凝固が知られているが,LuFeO3以外では,h-LnFeO3が生成した直後に安定相の斜方晶(o-LnFeO3)が核生成し,h-LnFeO3にとって替わることが知られている,すなわちh-LnFeO3を得るにはこの相の熱力学的な安定化が必要となる.この点に関して,近年Luの一部をScで置換することによるh-LnFeO3の安定化が報告されている. 平成28年度はこの手法(Sc置換)をTmFeO3に適用することにより,Tmの30-40%をScに置換した試料においてh-LnFeO3が安定になるという結果を得た.したがって平成29年度はSc置換を他のLnFeO3に拡張することにより,h-LnFeO3が得られる範囲を明らかにし併せてLnFeO3-ScFeO3の準安定擬二元状態図の作製を企図した.その結果,h-LnFeO3はLnのイオン半径が大きくなるに伴い,生成範囲が縮小し,DyFeO3では生成されないこと,さらに,h-LnFeO3の生成範囲が狭くなるHoFeO3以降ではSc置換量が60~80%においてGarnet相が出現すること等が分かった.一方LnFeO3の核生成温度とイオン半径の関係を調べたところ,h-LnFeO3が生成するLuからGdまではイオン半径の増大に伴い核生成温度は線形に低下するが,h-LnFeO3が生成されない(o-LnFeO3の生成が優先する)SmからLaまではイオン半径の増大と共に核生成温度は増加し,両者はEuFeO3で交わることが分かった.すなわちh-LnFeO3生成の可否はLnのイオン半径(すなわちTolerance factor)によって決まることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
“研究実績の概要”項で述べたTmFeO3についての実験結果は既にMaterials Transactionに発表しており,他のLnFeO3(Ln: Lu, Yb, Er, Ho等の重希土類イオン)についても実験をまとめる段階にさしかかっていることから,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
“研究実績の概要”で述べた「h-LnFeO3が生成するLuからGdまではイオン半径の増大に伴い核生成温度は線形に低下するが,h-LnFeO3が生成されない(o-LnFeO3の生成が優先する)SmからLaまではイオン半径の増大と共に核生成温度は線形に増加し,両者Euで交わる」であるならば,LuからGdまでであってもSmからLaまでの核生成温度の延長線まで過冷させれば,h-LnFeO3を介さずともo-LnFeO3が生成することが想像される.この仮説を確かめるべく,h-LnFeO3の核生成前の浮遊状態からチラープレート上への落下による急冷を行い,高速ビデオによるreal time観察により生成される相の同定を行い,「h-LnFeO3生成の可否はLnのイオン半径(すなわちTolerance factor)によって定まる」の実証を行い,且つ同モデルの数値化を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,日本金属学会春季講演大会に,当該研究の実施において実験の補助を行った研究協力者の参加を予定していたが,日程の都合がつかなかったため参加できず,次年度繰越金が生じた.繰越額は平成30年度の研究協力者の学会参加旅費に充当することを予定している.
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