研究実績の概要 |
代表者は,LnFeO3(h-LnFeO3, Ln:希土類元素)において過冷却融液からの凝固により準安定六方晶LnFeO3(h-LnFeO3)が生成されることを初めて報告し,Ln, Fe, Oのイオン半径の関係からh-LnFeO3が得られる条件としてTolerance factor(t)<0.87を提唱した.この条件を満たすLnは, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Luの8元素 であり,実際,これらの元素ではh-LnFeO3の生成が観察される.ただし,室温まで凍結されるのはt=0.84のLuFeO3のみであり,他のLnでは冷却中に安定相である斜方晶に変態することも明らかにした.すなわち室温においてh-LnFeO3を得るには,t<0.84が必要であることも分かった.さらに,同様の幾何学的考察からh-LnFeO3が得られるtの下限値として0.82を導いた.本研究ではこの仮説の妥当性を証明すべく,Ln一部をLuよりもイオン半径の小さいScに置換することにより,見かけのtを減少させた試料についてガス浮遊炉による無容器過冷却凝固実験を行った. 結果は,Ln(1-x)ScxFeO3についてxを0.1刻みで調べたところ.Luでは0<x<0.5の範囲で,Ybでは0.2<x<0.5の範囲で,Tmでは0.3<x<0.5の範囲で,そしてErではx=0.45に調整した試料においてのみh-LnFeO3相が凍結された.Scのイオン半径Scrを91pmとし,Lnサイトの平均イオン半径を(1-x)Lnr+xScrとしてtを計算すると,LuFeO3においてh-LnFeO3が凍結されるxの上限値0.5の試料ではtは0.82となり,予測と符合する結果となった.同様にYb,Tm,Erでにおいてもそれぞれ0.82,0.82,0.83となり上述の幾何学的考察に基づいた仮説の妥当性が明らかとなった.
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