研究課題/領域番号 |
16K06810
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
葛谷 俊博 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (00424945)
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研究分担者 |
濱中 泰 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20280703)
関根 ちひろ 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (60261385)
武田 圭生 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (70352060)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高圧 / 発光特性 / 多孔質 / カルコパイライト / 相転移 / 硫化銅 |
研究実績の概要 |
前年度は、ドデカンチオール錯体を前駆体とした超高圧下でのナノ粒子合成法を確立している。また、太陽電池材料として有望なCuInS2ナノ粒子を常圧下で合成し、圧力によりその構造と発光特性がどのように変化するか検討を行い、発光波長が圧力により変化することを見出している。構造については、3~5nmのCuInS2ナノ粒子を合成し圧力により結晶構造がどのように変化するか検討した。3nmの場合、15GPaまで圧力を上げても相転移を起こさなかったが、5nmのナノ粒子では12GPaでTetragonalからCubicへの相転移が生じた。Liらは16nm-CuInS2ナノ粒子の構造が10GPaで相転移を起こすと報告しており、粒子径が相転移圧力に影響を与えることを示唆している。発光特性についても圧力の影響を検討し、圧力の増加とともに発光波長は短波長側にシフトすることを確認した。この傾向は圧力媒体を変化させても同じであった。この発光波長の圧力による変化は、吸収スペクトルが示すように加圧によりバンドギャップが変化するからと考えられる。ただし、エタノール/メタノールなどの貧溶媒を使用した場合は、加圧時、減圧時に対しヒステリシスがみられた。これは、貧溶媒では粒子が凝集しており加圧によるナノ粒子の融合に起因する。 CuInS2の合成を超高圧下で行い、その影響について検討を行った。まず、文献を参考にCu-In複合チオール錯体を合成した。2GPa、250℃まで昇温するとCuInS2ナノ粒子が生じた。また保持時間とともに粒子が成長することが確認された。高分解能TEM解析により<1 1 2>面に囲まれた形状をしていることが分かった。Cu2Sナノ粒子では、単結晶かつ多孔質であるという新奇な構造を持つナノ粒子が合成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験条件:平成29年度は本学が所有する、500tおよび1500tプレスを使用し実験を行っている。このプレスを使用することで最大4GPaまでの合成環境が提供できる。また本年度よりKEKで実験を行い、ダイヤモンドアンビルを使用し15GPaまで加圧できるようになった。この圧力以下でin-situに分光測定や、広角、小角X線散乱実験を行っている。しかしながら、熱逃げなどのため反応に必要な温度域まで加熱することができなかった。本年度は、ダイヤモンドアンビルの筐体を見直し目的音戸の達成を目指した。 前駆体:平成28年度と同様にドデカンチオール錯体を使用している。硫化銅から本年度はさらに進めて2元系ドデカンチオールを合成した。2元系前駆体はワックス場となりハンドリング特性は低下するが、冶具の工夫により再現性良く実験をすることが可能となった。 その他:前回報告した針状ナノ粒子の他にCu1.8S多孔質単結晶の存在を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
目的温度である350℃程度まで加熱可能なダイヤモンドアンビルセルを作ることで、in-situにナノ粒子成長を観察できるようにしたい。このためには、ダイアモンドセルを支持する構造体に熱伝導性の悪い材質を使用するなど工夫する。また、本年度の検討で明らかになった、相転移圧力の粒子径依存性を詳しく検討し、ナノ粒子が持つ表面のソフトな有機膜の影響なのか明らかにしたいと考えている。このために、表面保護膜の種類をかえ検討を進めていく。 この他に、カチオン交換法による2元系ナノ粒子の合成や小角散乱を利用した超格子構造の圧力による変化などを検討して行きたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において、ダイアモンドアンビル改造に必要な構造体の作製費およびロータリーエバポレーターを購入し実験の効率化を図るため。
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