研究課題/領域番号 |
16K06819
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平井 信充 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50294020)
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研究分担者 |
兼松 秀行 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10185952)
生貝 初 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60184389)
岩田 太 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (30262794)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | バイオフィルム / SICM / 常在菌 / ラマン分光 / LBR / 走査型イオン伝導顕微鏡 / 走査型プローブ顕微鏡 / その場観察 |
研究実績の概要 |
バイオフィルムとは、水のあるあらゆる場所に存在しており、自然界にも広く存在する。細菌の作用により各種材料表面に膜状に形成され、様々な悪影響を引き起こす。例えば、金属表面に形成されると腐食、歯の表面に形成されると虫歯、病院内で形成されると院内感染の原因となる。そのため、バイオフィルムの生成を抑制する材料の開発が強く望まれているものの、材料との相互作用の影響を最も受けるバイオフィルム生成の超初期過程について、その観察手法は確立されていないのが現状である。本研究の目的は、水中での細胞等の形態観察に用いられてきた走査型イオン伝導顕微鏡(Scanning Ion Conductance Microscopy : 以下SICM)を用いた基板上に生成した常在菌バイオフィルム形状の水中その場観察である。 実験室バイオフィルム加速生成機(Laboratory Biofilm Reactor : 以下LBR)にガラス板(10mm x 10mm x 1mm)をセットし,希釈した人工海水(塩分濃度約1%)を303Kで1週間循環させてガラス板表面に常在菌バイオフィルムを成長させた後,SICMに導入し、生理食塩水中でその表面を観察した。なお、同様の条件で常在菌バイオフィルムを成長させたガラス板表面をラマン分光分析機(NRS-3100, JASCO社製)で分析した。 LBRから取り出した直後に得られたガラス板をSICMを用いて生理食塩水中で観察したところ、1~2ミクロン程度の太さを有する紐状のものが絡み合った構造が見られた。ラマン分光分析の結果、常在菌バイオフィルムに特徴的な1513,1154,1007 cm-1近傍のピークが見られたことから、観察された像は常在菌バイオフィルムであることが示唆された。 以上の通り、SICMを用いた基板上に生成した常在菌バイオフィルム形状の水中その場観察に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始は10月であったが、半年間で、1年目の目標であったガラス上に成長した常在菌バイオフィルムの液中その場観察技術の確立に成功した。 具体的には、LBRから取り出した直後に得られたガラス板をSICMを用いて生理食塩水中で観察し、ガラス上に成長した常在菌バイオフィルムの液中その場観察に成功した。 上記の通り、1年目の目標を達成したため、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始は10月であったが、半年間で、1年目の目標であったガラス上に成長した常在菌バイオフィルムの液中その場観察技術の確立に成功した。 今後、常在菌を特定の菌(シアノバクテリアや枯草菌などが候補)に置き換えて、SICMを用いた単一菌バイオフィルムの液中その場観察を行い、観察技術の確立を目指す。具体的には、観察装置の若干の改造や菌種など観察条件を予定よりも増やして実験を行う予定である。観察条件の最適化がこの目的を達成するための必須条件と考えており、多くの実験を通じて最適条件を見出し、目標を達成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
10月スタートであったが、1年目の目標である常在菌バイオフィルムの観察は予定より短期間である半年でほぼ目標と達成したため、1年目の使用金額は予定より少なかった。一方、2年目以降の目標である単一菌バイオフィルムの観察は、その目標達成には、観察装置の若干の改造や菌種など観察条件を予定よりも増やして実験を行う必要があるなど、想定より多くの消耗品を購入して多くの実験を行う必要があることがわかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
観察装置の若干の改造や観察対象とするバイオフィルムを形成する菌の菌種など観察条件を予定よりも増やすなど、想定より多くの実験を行う予定である。
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