水平円筒を液浴に半ば浸漬して回転させて円筒側面に形成した液膜に対する物質移動について検討した。液膜に対するガス吸収操作では、二酸化炭素の水および水酸化ナトリウム溶液への吸収および吸収液への水分の吸収について検討を行った。無回転の場合と比較して円筒回転により吸収速度は飛躍的に増大し、また円筒の回転数とともに吸収速度が増大した。これにより本機構によるガス吸収速度の高速化と、回転数によるガス吸収速度の能動制御が可能であることを明らかにした。溶液およびガス種を変更して行った実験条件の範囲内では気相側の物質移動の寄与は1/60程度で影響は小さく、液側の物質移動が吸収操作の律速段階となっており、液側の物質移動係数は回転数とともにほぼ線形に増加し、液膜形成条件により整理できることを明らかにした。物質移動についての熱流動の面からの検討では、円筒側面に形成した液膜の流量と厚さの関係から、液膜の平均速度は回転円筒側面の移動速度よりも遅くなっていることを明らかにした。本機構における液膜流動の駆動力は円筒の回転であり、液膜内部には円筒表面で早く、液膜表面で遅い速度分布が形成される。液膜の形成端において液膜厚さ方向の被吸収成分濃度が一様である場合、液膜表面から吸収された被吸収成分は液膜厚さ方向に円筒表面に向けて拡散する。上述の速度分布の下では液膜表面から遠い部分ほど清澄な吸収液が供給されることによって液膜内の被吸収成分濃度勾配が増強され高位に維持されることも物質移動の高速化に寄与していると推察された。上記より、回転円筒の側面に連続的に形成した液膜に対する物質移動について、その高速化機構を明らかにし、物質移動速度の能動制御に寄与する知見を確立することが出来た。
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