エレクトロ・アコースティック場を駆使、すなわち、超音波照射と電場印加を併用することで分級性能の改善を図ることを目的とした。しかし、超音波照射と電場印加の相乗効果を得るのは難しく、超音波照射のみでも十分な性能が得られることがわかった。むしろエネルギー的には有利であると考え、超音波照射の効果について深く掘り下げることとした。 超音波照射条件の最適化を検討し、照射方向は水槽底部から膜面に対して垂直方向、発振周波数はキャビテーションによる衝撃力がより顕著な低周波の28 kHz、出力電力は発振器の最大値である300 Wを選定した。 粒子径0.5μmと1.0μmの2種類の単分散微粒子を含む懸濁液を調製し、孔径1.0μmの精密濾過膜を用いて分級試験を行った。超音波非照射では分級が不可能であったが、超音波照射を施すことで1.0μm粒子の捕捉と0.5μm粒子の透過が効果的に進行し、さらに液透過速度の顕著な増大も見られ、分級性能は大幅に向上した。このように、超音波照射は高精度かつ効率的に膜分級操作を行うための極めて有効な手段である。 粒子径が0.08μmから1.08μmの範囲に分布している多分散微粒子を試料に用い、孔径0.80μm、0.65μm、0.45μmの3種類の精密濾過膜をこの順に使用して、多段階膜分級試験を行った。超音波非照射では分級の実現には至らなかったが、超音波を照射した結果、膜孔径による粒子径制御が精度良く行われ、また、膜孔径に応じた粒子回収率を順次得ることができ、高精度の多段階膜分級操作が実現できた。 分級性能を改善するためのその他の試みとして、分離膜への大気圧プラズマの照射による表面改質の効果について検討した。その結果、膜の表面及び内部に超親水基が形成され、これにより膜表面及び内部での粒子の付着・滞留が極限的に抑制され、分級性能を顕著に向上させることに成功した。
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