研究課題/領域番号 |
16K06825
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
南雲 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20552003)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水処理膜 / 膜ファウリング / 分子動力学法 / 水素結合 / 水和構造 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、水処理膜のポリマー素材を構成する分子鎖の時間揺らぎを解析するための基盤的アプローチを構築・整備した。 水処理膜のポリマー素材近傍には、有機物や生体分子など、膜ファウリングの原因となる種々の浮遊物質に加え、無数の水分子が存在し、浮遊物質の周囲を取り囲む。そのため、膜ファウリングの詳細機構を検証するためには、水のミクロ挙動を解析する取り組みが欠かせない。こうした背景から、アクリレート/メタクリレート系の各種ポリマーや、透析膜の素材として代表的なポリメタクリル酸メチル(PMMA)、さらには親水化剤として利用されるポリビニルピロリドン(PVP)など、種々の関連マテリアルを構成する繰り返し単位を対象に、素材近傍における水分子のミクロ挙動を分子動力学法によって検証した。具体的には、水和構造の静的な密度分布を示す指標として動径分布関数を導入し、対象マテリアル近傍の水和構造を解析した。その結果、PMMAやPVPの場合は構成ケトン基が水和構造ネットワークの中心的な起点となるのに対し、アクリレート/メタクリレート素材の場合は特にヒドロキシ基がその起点となることが確認された。さらにマテリアルの分子運動性を示す指標として自己拡散係数を算出したところ、ケトン基やヒドロキシ基の存在が、拡散係数の絶対値に強い影響を及ぼすことが判明した。 以上の結果は、マテリアルの分子運動性が特定の構成官能基によって支配されることを示唆しており、分子鎖の時間揺らぎを検証するための基礎データとして位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水分子の運動性や分子鎖の時間揺らぎを数値化するための各種計算プログラムが整備され、研究開始当初の進捗目標である膜ファウリング解析アプローチの開発が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
原水組成や温度などの諸条件を様々に変えながら、分子鎖の時間揺らぎがファウリング挙動に与える影響を解析する。これにより、マテリアル表面近傍のミクロ挙動と耐ファウリング性能の相関性を分子レベルで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、各種マテリアル近傍の水和構造やマテリアルの分子運動性の解析に注力した。これらの研究項目に対して当初計画をやや上回るエフォートを投入したため、それ以外の研究項目に関する大きな支出はなく、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、分子鎖の時間揺らぎと膜ファウリング挙動の相関性を詳細に解析するためのワークステーションの購入を計画している。また研究成果を公表するため、化学工学会や日本膜学会など、当該分野の諸学会における研究発表を計画している。別途、学術雑誌での研究成果の発表に際して、英文校正料、論文投稿料および印刷費を計上する。
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