研究実績の概要 |
粒子径を小さく保ったまま流動性を改善する手法の1つに微小粒子添加法がある。しかし,本手法は添加条件によっては流動性が悪化する場合も有り,その改善メカニズムの詳細は明らかになっていない。この理由の1つとして,本手法のほとんどの報告が添加粒子の被覆状態の定量化ができていないことが挙げられる。そこで,本研究では添加粒子の被覆状態を積極的に変化させ,それらの試料に対して被覆状態の定量的評価と流動性試験を行い,微小粒子の被覆状態が主粒子の流動性改善効果に及ぼす影響を検討した。 本年度は被覆状態を変化させる方法として,混合撹拌時の混合強度と速度の変化に着目した。主粒子と添加微小粒子には共にシリカを用い,被覆状態変化のための混合方法には(1)ボルテックスミキサーによる撹拌,(2)乳鉢による手動撹拌,(3)乳鉢による手動撹拌後に自動乳鉢での追加撹拌の3種類を用いた。なお,混合強度は(1)<(2)<(3)の順に大きくなると予想し,設定した。その結果,混合強度が増加するほど,圧密流動性の改善効果が大きくなることが示唆された。そこで,その傾向を確かめるため,自動乳鉢での追加撹拌時の押し付け力を5.5, 7.8, 11.0 N,乳棒回転速度を40, 80, 120 rpmと変化させ,これらの混合条件が圧密流動性の改善効果に及ぼす影響を調べた。その結果,押し付け力については,力の増加に伴い流動性の改善効果の増加が確認できた。しかし,回転速度については,改善効果の増加は見られなかった。また,各混合条件における被覆状態をSEMで観察し,被覆高さと被覆率を算出したところ,同じ添加割合では全ての条件において被覆高さはほぼ同等であったが,押し付け力が高いほど被覆率が大きくなる結果が得られた。よって,押し付け力は被覆率に大きな影響を及ぼし,流動性を向上させていることが示唆された。
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