研究実績の概要 |
粒子径を小さく保ったまま流動性を改善する手法の1つに微小粒子添加法がある。しかし,本手法は添加条件によっては流動性が悪化する場合も有り,その改善メカニズムの詳細は明らかになっていない。この理由の1つとして,本手法のほとんどの報告が添加粒子の被覆状態の定量化ができていないことが挙げられる。そこで,本研究では添加粒子の被覆状態を積極的に変化させ,それらの試料に対して被覆状態の定量的評価と流動性試験を行い,微小粒子の被覆状態が主粒子の流動性改善効果に及ぼす影響を検討した。 主粒子と添加微小粒子には共にシリカを用い,被覆状態変化のための混合方法には乳鉢による手動撹拌後に自動乳鉢での押し付け力を5.5, 7.8, 11.0, 17.5 Nと変化させて,これらの混合条件が圧密流動性の改善効果に及ぼす影響を調べた。その結果,押し付け力の増加に伴い流動性改善効果の増加が確認できた。この改善効果増加の理由の詳細を検討するため,混合前に微小粒子のみを11.0 Nで撹拌後,主粒子と押し付け力5.5 N, 11.0 Nで混合撹拌した試料を準備し,両試料の流動性改善効果を比較した。その結果,両試料の流動性改善効果の最大値は,主粒子と微小粒子を同時に11.0 Nで混合した場合よりやや減少するものの,ほぼ同じ値になることが示された。次に,混合時の押し付け力,混合手順の違いが被覆状態に及ぼす影響を検討するため,小角X線散乱を用いて各条件における被覆構造のフラクタル次元の算出を行った。その結果,事前撹拌有,あるいは,押し付け力が高い場合にそのフラクタル次元は小さくなる傾向が強く,複雑性が低い被覆構造であることが示された。よって,流動性改善効果には微小粒子の被覆構造が重要であり,その構造の複雑性が低いほど流動性改善効果が増加することが示唆された。
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